今ではもう、本当にそんな時代があったのかと疑われるかも知れないが、30年くらい前はアプリケーションの操作を全てキーボードで行うのが普通で、マウスがない環境が当たり前だった。一太郎もそんな時代からあるアプリケーションなので、マウスを使わずにキーボードで操作するよう設計され、その一連の体系が整理されている。
今でもその名残が、エスケープメニューやJW型キー割付として残る。
エスケープメニューは、Escキーを押下すると一太郎の画面下部にメニュー画面が出現し、そこに表示されるコマンドをキーで選択することによってコマンドを実行するというもの。よく使うコマンドのメニューの流れを覚えてしまえば、キー操作だけで高速にコマンドが実行される。マウスに持ち帰る必要がないので快適で、これを覚えることには今でも意義がある。
一方のJW型キー割付は、Windowsとは異なるジャストシステム独自の操作環境、ジャストウィンドウ用の操作体系だったものだ。30年近く前にはもうこのジャストウィンドウは使われなくなってきていたはずなのに、今になっても最新の一太郎でサポートされているというのは凄い。愛用者が多かった一太郎だからこそ、今でもその操作体系によっている人がいるのだろう。
少しそのJW型で使ってみると、Windowsに完全に慣れてしまっている状態では違和感が大きい。ファイル操作のメニューの考え方、範囲選択とコマンドの考え方が一般的なWindowsのそれと違う気がして、慣れない。Windows型の標準の操作体系は、他のアプリケーションでもだいたい共通しているから応用もできるのである。
あえて一太郎はその使い方をするのだと決めて取りかかる場合は良いかも知れないが、無理をして新たに覚える操作体系ではないような気がした。あくまで、これまでジャストウィンドウ型の操作で使ってきた人のためのものである。
JW型割付に関してはそんなふうに感じたが、古くからのユーザを大切にするというそういう方針が、今でも多くの人に使われている理由の一つなのではないかと思うのである。