戦前から戦後しばらくまで万年筆といえば本体内にインクを吸い上げて使うのが一般的だったと思うのだが、その頃以降はカートリッジ式が普及して、今ではむしろカートリッジ式のもののほうが一般的・主流になっているという気がする。
理由は単純で、そのほうが便利だからであると思う。インクが無くなれば、そのカートリッジを交換するだけで良い。インキ止め式、吸入式など本体にインクを溜めるタイプのものは、まずボトルのインクを用意しなければならない。吸い上げ作業も慎重さが求められるなど時間も手間もかかる。カートリッジ式なら、スペアインキとして替えのカートリッジを持ち運ぶのも簡単だ。かつてはダブルスペアタイプというのもあって、本体内に予備のカートリッジを収納しておくこともできる。カートリッジならインク交換時に手を汚すこともほとんどない。
実際、自分も万年筆に興味を持った当初は、カートリッジ式のものしか知らなかった。万年筆とはそういう物だと思っていて、ボトルのインクは付けペンのようなもので使うものなのだろうと思っていた。
今、カートリッジ式のものはたいていコンバーターを取り付けてボトルのインクを吸い上げて吸入式のような使い方もできるようになっている。このことも結構後になって知ったが、そういうやり方で任意のインクを使えるというのは、吸入式の利点とカートリッジ式の利点とが合わさって、両方好きなやり方で使うことができるハイブリッドなので、考え方としても最新だし理に叶っている。
ボトルインクのほうがコスト的には安いし、特定の色だけではなく好みのもの、好みのインクを使うこともできる。コンバータは交換することも当然可能なので、劣化や故障などその部分が原因なら簡単に交換して対応することも可能であり、メンテナンス性も良いので考え方として最近の動向に合っている。万年筆をよく使う人が皆ボトルインクを使っているわけではなく、カートリッジのほうを使うという人も多いのではないか。
自分はボトルインク派であって、当初はカートリッジ式がほとんどの国産品を敬遠していたが、両方使えるハイブリッドと考えるとむしろその方式のほうが十分実用的かつ楽しめるのではないかと思っている。規格に共通点がないのが残念。