万年筆のことをよく知らない頃は、ガラスケースに入ってカウンターで売られているような高級な筆記具というイメージもあり、中々簡単に入手できるものでもないのだろうと思っていた。店頭で手に取って自由に選んで買えるようなものではない。要するに、高価なものと思っていた。
初めて買ったのは、たまたま店頭で普通のボールペンと同様に売られていたセーラーのハイエースだったが、これも1000円で、当時の自分にとっては筆記具としては高価なものだった。本格的なものはもっと高価で、とは言っても数千円から1、2万円くらいなのだろうとは思っていた。
ハイエース万年筆は、当時は手紙文などを書くのに使った。それが特別な筆記であるというつもりで、普段とは違う筆記の場面に使ったつもりだが、使い方をよく知らない状態だったので、だいぶ雑に扱った。切り割り部分に紙を挟んでみたりカッターの刃を差し込んでみたりもした。今ではそんなことは絶対にしないが。
25年以上前のものなのにカートリッジを差し込めば今でもまだちゃんと使える。普通筆記具はそう簡単には壊れないのかもしれない。
万年筆に興味を持つ直接のきっかけではないが、使用感の基本になっているのがハイエースである。
1000円以上の万年筆は、全てこれ以上の性能を期待するのであるが、その後2000円で購入したシェーファーの万年筆は全て期待はずれだったし、今でも安価な製品の中にはこのハイエースの品質に及ばないものもそれなりにある。
今はPILOTのカクノが人気で、同じような位置付けなのだろう。自分は使ったことがないものの、ベーシック万年筆は今後の万年筆選びの基本になるようなものであると思うので、安いからと言って侮れないと思う次第である。