文章書きの作業をするのに、ワープロを使うかエディタを使うかという比較は、一時期よく行われていたように思う。たいてい、そういう比較はエディタを主に使う人が行うので、エディタに軍配が上がっていた。自分もだいたいそう思っていて、今なお文章書き作業はエディタを使うことが多い。
エディタがワープロソフトより優れていると言われるのは、多分、だいたい三つの点がある。一つは、起動の速度の差でエディタはワープロに比較して圧倒的に速い、一瞬で起動するというのである。二つ目はファイルの互換性の問題。汎用性の高いファイル形式はテキスト形式というわけである。三つ目はカスタマイズ性の違い。細かな設定ができるエディタが優位という評価だ。
もちろん、これはこれでそのとおりなのだが、エディタにもワープロにもいろいろと種類があって、高機能エディタとメモ帳では全く違うし、ワープロでもWordと一太郎ではだいぶ事情も機能も違う。
改めて考えてみると、今ではワープロも著しく劣っているわけではない。たとえば一太郎なら、エディタでなくても問題ない。
起動の速度も、今のパソコンの環境ではそう大差ない。エディタの方が高速かもしれないが、かといって一太郎の起動速度が特別遅いわけでもないし、エディタもそれなりに起動するまでの時間がある。文字入力に関する動作速度なども、問題になるほどの違いは感じない。
ファイルの互換性についても、一太郎ならかなりのシェアがあるので、形式が何年も後で読み取れるかということもそんなに心配は無い。いや、心配はあるとしても、その形式で何年も残す必要があるほど汎用性を求めるのか。そういうことがあるなら、エディタと同じテキスト形式で保存したら良いのだし、一太郎にはエディタフェーズというのまである。再編集はできなくなるがPDFに出力するという方法もある。Wordの形式で保存するなら汎用性はもっと高くなる。
カスタマイズについては、高機能エディタのように多数のカスタマイズ項目があるのは嬉しいところだが、そんな細かい部分まで求める必要があるのか。自分としては配色とか文字の大きさくらいが最低限、自分の好きなようにできるのならひとまず問題がない。
特に一太郎は、日本語文章の作成に特化した高度な編集機能を備えて、それを売りにしている。実際、便利だ。
そういうワープロソフトを使う場合、プログラミングのソースなどを編集するのに向いているエディタとの比較ならワープロソフトの方が目的に合った使い方ができる。
エディタが優位と言われて久しいが、今に至っても、エディタの知名度は高くない。一太郎やWordなどのワープロは知っていてもエディタは知らないという人は結構多い。シンプルなテキストを扱うツールであって、それはそれで必要なツールだが、専門的な部分も結構多く、万人が必要とするものにはなっていない。
両方あって、使い分けができることが一番良いとは思うが、文章作成と文書作成、印刷という一連のプロセスを前提とする場合が多いので、一般にはワープロがあればそれで用が足りてしまうのである。
そういうわけで、ここまでこの記事は一太郎2015に付属の一太郎dash 30thを使って書いた。ドラフト編集の画面で配色はエディタのそれと同じように設定している。画面はシンプルで、行番号表示などもさせるとまさにテキストエディタのようである。文章書きに普通に必要とする機能は高機能エディタほど硬度ではないにしても、自分が書く程度の文章では十分だし、何十MBものサイズのテキストというわけでもなく、動作速度も問題ない。できあがるファイルは標準の一太郎形式となるが、最終形態はブラウザに貼り付けてこのブログに投稿するのだから、その形式は特に問題にならず、原稿として長期間残しておくような必要もない。
好みと言ってしまえばもうそれきりになるが、最近では一太郎を使って文章を書く方が、まさに日本語に最も適した環境で書いているのだという自己満足、文豪が使うような高価な万年筆で書いているような、どことなく豪華な気分に浸ることができる。