本体吸入式の万年筆

投稿者: | 2018-09-18

十数年前、初めてちゃんとした万年筆を使おうと思った時、ボトルインクから万年筆の本体にはペン先から吸い上げるのだと知って驚いたのを思い出す。
子供の頃に見た万年筆も、それ以前に購入したことがある安価な万年筆もカートリッジ式であって、それ以外の方法を知らなかったのである。おそらく、実際には両用式だったのだろう。
ボトルのインクがあるのは知っていたが、入れる方法までは知らなかった。ペン先にインクを浸けて使うか、入れるとしても首軸か尻軸側からスポイトのようなもので入れるのだろうと考えていて、まさかインクの出口であるペン先から逆の方向に入れるとは考えも寄らない。
でも、そうやって使うのだと知ると俄然興味がわいてきて、むしろそれが本格的なものだという気がしてPelikanのスーベレンを選んだ。
国産の万年筆はほとんど両用式で、コンバータという器具を使わなければそういうインクは使えず、自分が昔から知っているカートリッジを使う方が基本になっているようだと思ったのである。実際、今でも国産3社の製品のほとんどは両用式で、3社の製品で本体吸入式はほとんどない。
そういう舶来の本体吸入式の万年筆を数本使い、少し空き期間もあって、やがて両用式の国産万年筆も使うようになった。コンバータを使えば吸入式と同様にボトルのインクを使うことができるし、仮に故障したとしてもコンバータを交換することで簡単に対応できる可能性が高い。手軽にカートリッジも使えるので、むしろ本体吸入式より進化している形態なのではないかと思うようにもなっている。
そう思っているが、吸入式はそれはそれで利点もある。最近専らPILOTの両用式各種モデルを選んでそればかり使っているが、そのPILOTにも本体吸入式モデルがあるので、それを使ってみることにした。
PILOTの吸入式としてはカスタムヘリテイジ912とカスタム823がそれだ。カスタム823は一般的なねじ式ピストンのものとはまた違って、プランジャーと呼ばれる独特の機構を持っている。ピストンで作り出した気圧差を使ってインクを本体内に吸引する。昔からあるインキ止め式にも似ているらしい。
当初から興味は持っていたが、種類が少なく特殊な機構だと思っていたし、そもそも本体吸入式より両用式のほうがメンテナンス性が良さそうであったりすると思っているので、しばらく選ばないでいたのであるが、コンバータと比較しても1.5~2倍くらいの容量のインクをため込むことができるなど、面白そうな要素もあるので、今後は嫌わずに使うつもりなのである。