万年筆の字幅は基本的には細字が好みである。小さめの字も綺麗に書けるし、ノートや手帳など使える場面が多いからである。万年筆で字幅を選ぶ時はまずは細字ということにしている。購入する万年筆は今後それを主に使いたいと思って買うことが多いので、できるだけ使用用途が広いものとして細字を選ぶことが多いのである。
だが、何本もそういう万年筆を所有してくると、違った字幅も欲しくなってくる。
多くの万年筆愛好家が中字や太字を好んでいるので、中字とはどんなものか、標準的に使えるのかと気になって集める。しかし、最近まで太字の万年筆は選んだことがなかった。中字でこの程度の字幅なら太字になると本当に使う場面が限られてくると思ったのである。
しかし昨年くらいに、太字もとにかく一度は使ってみようとカスタム74の太字を購入してみた。言うまでもなく中字よりも一段太い字幅で、狭い罫線の所などでは画数の多い字などは潰れてしまうのであるが、慣れてくると、適当に画を省略してみたりして、それが面白い。細字よりもはっきりと強弱も表現できるようになり、万年筆らしさが現れるという意味も少しだけわかってくる。
そうなると、太字もまた楽しいものだと思えるようになってくる。
だからといって、そればかり使うようなものでもなく、実用の用途はやはり細字が中心で、太字は使い道が限られていることに変わりはないのであるが、普通の人が選びにくい太字万年筆を使って遊ぶという贅沢は、これでまた良いものなのである。