用途別や家族別、予備機や場所別など理由はあるが、自宅で複数のPCを使っている人は少なくない。そういう場合、それらのPC間で共有したいデータがある。同じデータを利用するためには、何らかの方法でそれぞれのPCで使える状態にしなければならない。
単純な方法としては、USBメモリやHDDなどの媒体にそのデータを保存して持ち運び、別のPCで使えるようにする。基本的にはこの方法が一番明快で仕組みがわかりやすい。だがこの方法は、媒体を接続してPCに認識させる手間が必要であるのと、その媒体をPCからPCへと運搬しなければならない物理的な手間がある。コピーを多用すると、どれが原本だかわからなくなるということもある。
もう少し高度にするためには、NASを導入することも考えられる。ただし、ネットワークに関する知識が少し必要になり、機器の価格も他の媒体に比べて高い。起動に時間がかかることもあり、常時起動しておくと省エネではなく、機器やディスクの劣化も他と比べて早いかもしれない。
そこで考えられるのがクラウドを活用することである。ネットワークストレージのサービスを利用して各PC間でファイルを共有したり同期したりする。無料でも十分に機能するサービスがあり、従来の閉じた空間や旧来の媒体連携以上の高度な管理もできる。
クラウドで問題になるのは、オフライン対策もあるが、自分の管理の範囲外にファイル・データを預けることになるためセキュリティへの対策である。
普通、アップロードしたデータは第三者がアクセスできない領域に保存され、IDやパスワードの管理を徹底しておくことで問題ないが、サービス運営者が管理や広告収益のためにデータへのアクセス権を持つ規約になっているのが普通である。個々の利用者のデータを一々閲覧しているとは考えられないが、規約上はできるため、機械的な検索やデータ収集の対象にはなっているかもしれない。
そのようなことを前提にすると、個人情報を含むような第三者に見られるべきではないデータはそのままクラウドにアップロードすべきではなく、最低でもパスワードをかけるとか暗号化を行うなどの対策は必要である。
自宅で使用するPCに保存されるものは、個人情報や私的な内容を含まないデータなど少ないのではないか。年賀状のデータは宛先の個人情報、支払いの控えには金額や支払者・支払先、サークル活動のデータにはメンバーの名簿、趣味で作成した著作物には権利にも関連するし、電子メールのデータはそもそも通信の秘密に関係する。
クラウドストレージのサービスは無料でもたいてい5GB以上の容量があって、写真や動画の保存先としてもよく利用されている。規約的にはデータと同様ものと思うが、写真も文書データ以上に肖像権に関連したり個人情報を含む。ところが写真や動画の保存ということに関しては、共有するという目的が優先されるためか、あまりそういうリスクには注目されていないようだ。
現実的なところでいうと、通常の利用目的ではどこまで許容するか許容できるかがクラウドのサービス利用の要点である。