カートリッジとコンバーター

投稿者: | 2016-11-19

万年筆を知った当初、インクの補充の仕方はカートリッジによるものしか知らなかった。各種のボトルのインクが売られているのは知っていたがどうやってそれを使うのかということなどは想像すらしなかった。それまでに自宅などで見た万年筆はすべてカートリッジのものだったからかもしれない。
最初に買ったセーラーのハイエース万年筆もずっとカートリッジで使用した。コンバータという器具を知るのはずっと後になってからのことである。
実際、カートリッジは便利である。交換を行えばそれだけでインクの補充が行える。吸入式などの手間を知っている今だからこそそう思うところもあって、そういう観点では確かに、純正の限られた色のインクしか使えないとか、割高だとか、使い切るまで交換できないとか、そういう欠点もある。
ただ、普通特別こだわらなければ普通にある黒赤青ブルーブラックがあれば選択肢としては十分だし、メーカ間の色の違いも普通は気にしない、割高とは言ってもインク自体そんなに高価なものではなく、1本装着したらそれなりに結構使える。純正の方式という安心感もある。趣味としてではなく一般の筆記具という範囲で使うのなら、基本的にそれで十分なのである。
万年筆に興味を持った時は、ボトルのインクから吸い上げて使うほうが本格的な気がして、当初は本体吸入式のものばかりを選んだ。国産の製品では吸入式の選択肢は少ないので海外製品を少しだけ集めた。コンバーターの存在もそのときに知ったが、カートリッジの代わりに取り付ける部品ということで、なんとなく互換的な使い方というイメージがあってそういう方式は選ばなかった。
そのうちに国産の製品も舶来品以上に品質が良く、何より日本語を書くならより適しているだろうし、同じ性能としても圧倒的に国産品のほうが安価であるので、国産万年筆も使ってみることにして、そのときに初めてコンバーターというものを使ってみた。
取り付けてツマミを回転させピストンを上下させてインクを吸い上げたり排出したりする動作は吸入式と基本的に変わらない。
コンバーターとカートリッジの両用式は、手軽に一般的な方式でも使えるし、趣味で各種のインクを使ったりあるいは大量筆記などのコストの点などからボトルインクを使うことにも対応できる。吸い上げる量は少ないが、本格的な使い方、と感じられる。取り外すことで洗浄も容易だし、万が一故障してもそれだけ交換することも可能。考えてみるとむしろこのほうが高性能とも言えるのではないかと最近は思う。
さて、今自分が常用しているのはすべてPILOTの万年筆であって、そのPILOTには4種類ものコンバータがある。うち4種類は生産終了だが幸いこの4種類をすべて使ってみることができた。
PILOTのコンバータで最初に使ったのはCON-20である。金属軸の板バネ式というもので内部にゴムチューブが付いていて、このチューブを板バネ部分で押すことによって、スポイトの要領でインクを吸い上げるという方式である。子供の頃、自宅にあった古い筆記具の軸を開けて、おかしなゴムチューブがついているものがあったが、おそらくそれがこういうスポイト式のインク吸い上げ機構なのだとこれを見て知った。
CON-20は吸い上げた量が全く見えないが、Capless万年筆の金属の軸にぴったりなのでそれを選んだ。吸い上げ操作が単純で楽にできるし価格も最も安価で気に入っているのだが残念なことに生産終了となっている。
次に使ったのはCON-40というコンバータで、これは生産終了品の後継品となるものである。ただし、スポイト式ではなく一般的な回転吸入式のタイプで、ピストンを上下させてインクの出し入れをする。軸はすべて透明でインクの量が見えるのは良いが、棚吊りという現象防止で入れられている数個の小さな金属球が、ペンを動かすたびにチャラチャラと安っぽい音を立てるのがかなり気になる。それまでに使ったセーラーのコンバータや後述するCON-50と比較するとすべてプラスチック部品で強度の点など大丈夫なのかと心配にもなるが、そう簡単に壊れるものではないと思うのでひとまず安心して、Cocoonなどで使っている。購入時も箱入りではなく安価な筆記具同様の樹脂袋入りというのもなんとなく安っぽいイメージに拍車をかけている。CON-20や50と比較するとインクの容量も0.1cc少ないとのこと。しかし今後の標準のコンバータはこれになると思うので不満な部分も我慢して使うしかない。
CON-20と共に生産終了となったのがCON-50で、これも一般的な回転吸入式である。おそらくPILOTの万年筆コンバータでは最も一般的なタイプとして使われていたもので、やはり棚吊り現象防止のため、インクを攪拌する金属部品が入っているが、CON-40ほどカチャカチャと音がしないのでなんとか許容範囲だ。生産終了でネットでは在庫品が高価で売られている状況であるのでもう入手できないかと思ったが、プレラなど最初からこれが付属している万年筆を購入するとCON-50も入手することが可能だ。プレラから付け替えて、別のCaplessで使っている。
4つめのコンバータはCON-70で、これは他のコンバータの倍のインクを吸入できる大きなコンバータである。吸入式にも匹敵する量という。方式はプッシュ式といって、尻軸側のボタンを押すことによって中の空気が排出され、それによる気圧差でタンクにインクを吸い上げる、スポイト式の原理を応用したものと思われる。太軸の万年筆でしか使えないもので、自分はエラボーに付いてきたもので使っているが、これもCON-20同様に片手で操作してインクの吸い上げ操作が楽にできるところがまず良い。容量も十分で、減りの早い中字以上の万年筆でも安心して使える。インク吸い上げ部分も透明パーツなので量も把握できる。つまり、4種類を比較して特に欠点が見当たらないコンバータであると思い、今のところ一番気に入っている。価格は700円で最も高価だが、舶来品万年筆のコンバータは小型のものでも1000円以上も普通なので、それから比べると不満はない。むしろ、このコンバータを使うためにこれが使える万年筆を買うべきかと思うくらいである。
今、自分はカートリッジはほとんど使わずコンバータでボトルインクを使う。インクの色を時々変えるのもまた楽しいし、標準のインクにはない色合いで気に入った色が使えるのが面白いからである。
ただ、そういう面白い、気に入った色合いばかりを使っていると、今度は逆に標準インクの事務的な色合いもまた懐かしさもあって使ってみたくなる。そういう場合は時にカートリッジも良いかもしれない。そんな風に遊んでいるから、いろいろと時間がなくなるというものなのである。