海外、特に西欧では鉛筆は早い段階で卒業して万年筆を使わせている国もあるという。そういう国の人たちは、日本のように学生になってもまだ鉛筆やシャープペンシルを主に使っている姿を奇異に感じるらしい。修正過程が大事であって、それがわからないように消しゴムで消されて完成状態になっているノートは学習にならないとか言っている人もいるようだが、実際日本人の学力はそういう国よりずっと高いのも事実である。
簡単に言えば、西欧と日本との文化の違いであって、だから良いとか悪いとか、そういうものではない。数十字を習得すれば文字の学習は終わってしまう西欧とは違い、日本では何千字もの漢字を何年もかけて覚えなければならない。書いて覚えるためにはそれが表現しやすい筆記具として鉛筆が適切だし、清潔好きの日本人がインクで手が汚れるのを嫌うのもある。同様に、修正して汚くなったノートではなく、正しい内容のみで整理された完成品のクォリティ、たとえ人に見られたときでも恥ずかしくない綺麗な物を好むのも日本人ならではであろう。
実際、これまでそれでやってきて、今何も困っていない。学力が世界的に劣っているわけでもない。なので、子供の頃から万年筆を使わないことは全く悪いことではなく、そもそも学力にも何も関係ない。
とは言っても、子供の頃に万年筆という筆記具を知ることもまた悪いことではない。鉛筆やボールペンとの違い、どういう筆記をする時に便利なのかという特徴を知ることは有益である。産業としても、早い段階から興味を持ってもらえればまた少しは高価な万年筆製品のシェア拡大にも影響するかもしれない。万年筆ユーザが増えてそういう市場が若い人にも拡大すれば、製品ラインなども増えるしデザインとしても面白い物が出てくるかもしれない。