万年筆を使わない理由

投稿者: | 2016-11-26

万年筆は、使わない人も居る。むしろ、今では使わない人のほうが多数だろう。
何故使わないのかと考えてみると、必要がないから使わないのである。何故必要がないのかといえば、他の筆記具で間に合っているからに他ならない。百円程度で買えるボールペンを使えば筆記の目的は達せられるのであって、普通はそれで十分で、万年筆で書かなければならないという義務の書類はない。
コストの点もある。万年筆は普通だいたい1万円とかそれ以上のものが一般的と思うが、そんな高価な筆記具を使うという考え自体、今はあまりない。長期的な視点で見ればそれでも万年筆の方がコスト面では良いと言っても、百本分以上のボールペンに相当するので、それだけのボールペンを使う量とそれに要する期間を考えれば、割安の効果が現れるのは相当先になるのがわかるので、割高かもしれなくても当面今安価に入手できるボールペンの環境が選ばれるのは当然とも言える。
万年筆はまた、使い方も独特のところがあって、それが敷居が高いと思われるところもある。たとえば、割と頻繁にインクを補充しなければならない。買ってきてすぐには使えず、別売りのインクを用意したり、その用意したインクをセットしてしばらくしなければ書き始めることもできない。ボールペンなら、すぐに書き始められる。
取り扱いも、ペン先を保護するために細心の注意を払ったり乾燥を防ぐためにすぐキャップをしたり、メンテナンスのために毎日使わなければならないとか、そういう面倒なことをしなくても良い筆記具があるのだから、わざわざそれを選ぶということは多くの人は考えない。製品としても、国産のものはデザインのバリエーションが画一的で、黒軸金冠のオーソドックスなものは高齢者が使うイメージが強く、女の人や若い人は選びにくい。
販売スタイルも独特で、まずコンビニや書店の文具コーナーなどで買うことはできない。ネットで選んで買うか、店舗ならちゃんとした文具店か専門店にいかなければ入手できない。そういう店に行っても、万年筆はガラスのケースに収められていて、手にとって感触を確かめたり試筆するためには店員に声をかけなければならない。自由に触ることはほとんどできない。そういう買い方に慣れていない若者などにとってはそれだけで相当敷居は高い。
おそらく、そういう所が変わらなければ、今以上のシェア、昔のようなシェアを取ることは今後もない。ヒット商品が出たらまた少しは変わるとしても、ボールペンを超えるというようなことは多分考えられない。
とはいえ、そういう多数派の使わない人が居るからこそ、少数派の自分のように使う人がその楽しみを味わえるのであって、それはそれで別に良いのだと自分は思う。使う人が増えれば市場も拡大して面白い商品なども出るかもしれないが、これに関しては定番品で使い易いものだけでも選択肢がそれなりにある現状でだいたい良いのではないかという消極的な考えである。