万年筆のインクは、基本的にどのメーカーのものを使っても問題がないようになっているのだが、自社以外のインクの使用をメーカーが保証しているわけではない。カートリッジやコンバータもメーカー毎に異なる規格で互換性がない。
ヨーロッパの国の幾つかのブランドは欧州規格というのがあって、カートリッジの大きさが共通になっているらしいが、インクはそれぞれのメーカーとなっている。
万年筆に限らないが、付属品や消耗品は同じメーカーのものを使うというのが当たり前になっているので、普通はいわゆる純正品を選ぶのだが、中には同じ規格で作られた互換品というものも結構あって、純正品よりも安価であるためにあえてそれを選ぶ人も少なくない。
メーカー側の利益の関係もあるので実現性はひとまず別にして、万年筆のインクも色々あるのだから、どのメーカーの万年筆でも問題なく使えるというジェネリックなインクがあっても面白いのかと考えた。互換品ではなく、共通品のような位置づけだ。
黒、青、ブルーブラックと赤、あとはカーボンブラックくらいの種類で、公開された一定の成分・製法に基づいて作成されるというもの。なので、既存の万年筆メーカーやインクブランドが作っても良いし、新たな企業が参入しても良く、どこが作っても基本的に同じものができるという仕組だ。
無印製品のようにパッケージはシンプルで、「万年筆用・黒インク」「万年筆用・青インク」くらいの単純な製品名で良い。
インクは種類があってこそ、選ぶ楽しみ使ってみる楽しみ、本体との相性があって、それが「インク沼」を生み出しているわけでもあるが、特別そういう趣味ではなく、実用品として万年筆を使いたいとか、特に深い興味があるわけでもない場合については、どのインクをどう選んで良いのか迷ってしまう。ある店には自分の使っているメーカーのものが置いてないということもあるかもしれない。
ジェネリックなインクになると、多くのメーカーが同じものを作って納入できるので、再び近所の文具店や書店の文具コーナーなどでも入手できるようになるかも知れない。色だけ指定したら、どの万年筆でも使えるのだから選び間違いがなく、選ぶのにも苦労しない。カートリッジやコンバータも共通になって既存製品もそれに対応すると更にそういう標準化も進む。
普及が進み標準的なインクになれば、性質や色味の基本になって、他に多数ある別のインクとの比較の基準にもなる。
様々なインクを選ぶのも使ってみるのも面白くて、自分もそれなりにたくさんの種類のインクをストックしている。インクを使うためにまた万年筆が欲しくなるという沼へ入りかけてもいるのだが、何も考えずに今日はこれを青で書く、黒で書く、くらいの気持ちの時にそういうインクがあると悩みが少なく、標準的な製品インクで書いたのだからと思えば、あのインクを使うべきだったと後悔することもないかもしれない。
これはジェネリックなインクで書かれているから、特に万年筆に興味が無さそうな普通の人なのかもしれないとか、使われているインクでそういうことがわかったりして、逆にそういう愛好家はこれまで通り様々な違ったインクを使うので趣味性が一層増すとかもあるかもしれない。
万年筆は再びブームになりつつあるようで、利用者が増えてきているらしいが、昔のように誰もが使うようになると、そんな選択肢もあると面白い。