インクジェットプリンタのインクは、万年筆以上にメーカー純正品かそうでないかが問題になっている。プリンタのインクはそもそも機種群毎に異なるカートリッジで得意な機構を備えているので、純正品でなければメーカーがOEMなどで認めた物しかあり得ないはずなのだが、この手の物にはだいたい互換品が存在している。
その一番の理由は純正品で囲い込む閉鎖的な市場に不満があるからで、端的に言うと純正品が高価であるからだ。自分のモデルのインクは6色を使うが、1色のカートリッジで約1000円もする。6色で6個なら約6000円で、数回全色を交換したらプリンタの本体価格を簡単に超えてしまう。消耗品で儲けるビジネスモデルなので、万年筆のインクの価格とは大きな違いがある。妥当な価格は1個当たり200円程度と思うが、残量や純正品検知など複雑な機構も付けてわざと価格を上げている。
互換品は純正品に比較すると価格が安いものの、正式にメーカーに認められているものでもなく、使うなと注意されているくらいなので、問題なく使えるかどうかの保証もない。インクの成分も純正とは異なるので、それが原因で本体機器を故障させたり寿命を縮めたりする可能性も否定できない。もちろんカートリッジもインクも品質は純正品が最良であることに疑いはないので、メーカーの保証を受けるつもりだったり、写真などできちんとした発色と保存性を求めたりするなら互換品は使ってはいけないのである。
プリンタは購入から何年も経過し、そろそろ買い換え時ではないかというくらいで、もう故障したとしてもそれが買い換え時に繰り上がるくらいだと考えているような段階では、互換品を使うという選択もあっていい。
そういう自分もやはり、基本的には純正品を使うのであるが、プリンタも買い換え時かと思い始めて最近は互換品を使う機会も増えてきた。概ね問題なく使えているのだが、過去の互換品はインクの成分の違いにより特定の印刷方式で発色しなかったりしたこともある。更に詰替インクなどに手を出すと、補充に手間がかかるばかりではなく、なぜかどこかから漏れてプリンタ内が大変なことになっていたこともある。
従って、誰にでも互換品を勧められるものではないのだが、価格が安いのは絶対的な魅力である。通常の文書の印刷程度であれば、長期保存などに拘らない限りはインクの品質はそんなに問題にならないだろうと思っている。同じように考える人は多いはずで、今後も互換インクは販売されていくのだろう。家電量販店など、ちゃんとした店舗で売られているのだからそれなりの品質はあるとも思える。
6000円の純正品と、3000円の互換品が並んでいて、それが同等の役割を果たすものだとしたら、純正品を選ぶ方が勇気が要ると考えても全然おかしくない。
だいぶ前の話になるが、以前ワープロ専用機のインクリボンもだいたい安価な互換品を使っていた。純正品は最初の1本くらいで、あとはずっと互換品であった。店舗にも純正品ではなく互換品しか見かけなかったような気さえする。