専用の瓶に入っている万年筆のインクは、瓶に万年筆のペン先を浸して吸い上げ、本体内やコンバータの内部タンクに吸入して使う。
ペン先は一定以上の深さまで浸さないと吸い上げられない。瓶の中のインクの残量が少なくなって限界以下になると、それ以上そのままでは吸い上げられなくなる。瓶の形状によっては、まだずいぶん残っていてもそれ以上そのままでは吸い上げられないという場合も出てくるが、そういう場合、なるべく無駄なくインクを使い切るにはどうしたら良いのか。
残量が少なくなってきたら、同じインクを買って継ぎ足すという方法が考えつくが、これは推奨されていない。新旧のインクが混ざると古いインクに残る不純物などのせいで変質したりするらしい。
対策の一つは、瓶を傾けて残量の嵩高を稼ぐ方法がある。要は斜めにすると深くなるので、普通に置いた状態では吸い上げられなくなってもまだ少し使えるようになる。瓶によっては傾けて置くことができる形状に作られている物があったり、インクが溜るような形状の部分が作り込んであるものもある。
これらの空瓶があれば、それに移し替えて使うという対策がまず一つあるのだが、空瓶だけ売っているわけではないので、使い切った空瓶を再利用するしかなく、そもそも元のインクを使い切ってそういう空瓶を作り出すことが中々難しい。
それに、このような瓶の形状であっても限界があり、勿体ないと思えないほどに使い切るのは難しい。
リザーバと呼ばれる器具がボトルの中に挿入されているインクもある。これは少量のインクをため込むカップのような部品で、瓶に蓋をして逆さにして蓄えることができるので、残量が少ない場合でも効率的に使える。だが、やはり限界はあり、残量が少ないとうまくリザーバにインクを蓄えるのが難しいかもしれないし、リザーバを備えているインクが限られるので、それ以外のものについてはこの空瓶を再利用することが難しい。
吸い上げられない残量になったら、注射器で吸い上げて直接コンバータやカートリッジの空容器にインクを注入してから万年筆本体に取り付けるという方法もある。
これは中々良い方法でもあるのだが、カートリッジの再利用は、初回使用時に開けた蓋が首軸の槍出し部分、蓋を突き破る部分に上手く当たるようにしないと、蓋が変に開いてしまったり槍出し部分を破損してしまったりすることがあるらしい。
また、コンバータは何度も付け外しをしないほうが緩みやすくならないので、できれば避けたい。
自分が考える最善の方法は、残りを小瓶に移し替えることである。
小瓶は、万年筆のペン先が入る大きさの口を備えているものである必要はあるが、それ以上には太くない形状のものが一番効率が良い。素材は、PETなどよりガラス瓶のほうがよく、蓋もきちんと密閉できるようなものがあるのが望ましい。100均などでもそういうものがあるかもしれないが、模型のタミヤから出ている塗料用のミニボトルがちょうど良いようだ。これの10ml角瓶である。
自分はまだそういう小瓶に移し替えてはいないが、そのタミヤ瓶に水を入れるなどして試してみた。
ペン先はハート穴まで浸せば吸い上げられるというカスタム74では、その10mlボトルで残り2~3mlになるまで、ハート穴が浸る深さが確保できれば吸い上げられた。このくらいの残りになるまで使えるならば、残りは捨てても惜しくない。
実際、そのくらいの残りになると底の方には不純物、ゴミなどが溜っていそうなのでむしろ捨てた方が良いような気がするのである。ペン先を深く入れすぎて底についてしまうとそういう不純物を吸い込む可能性もあるし、ガラス瓶の底に強く当たりすぎてペン先、ペンポイント部分に影響を与える可能性もある。これは、小瓶でなくても同じであるが。
移し替えるときは、瓶から瓶に直接うまく入れられるのかはまたいつか実験してみないとわからないが、小瓶の側も入れすぎるとペン先を浸したときに溢れるので、瓶の肩辺りを超えては入れるべきではない。
同じような形状のものでは、PILOT色彩雫の15mlボトルなどがあり、使い切った瓶があればこれを再利用するのでも良いかも知れないが、結局これも使い切る必要があって空瓶を確保するのは困難でもある。