PC上で日本語、和文、かなを入力する方式は、ローマ字入力やJISかな入力、親指シフト、最近ではフリック入力も有名だが、それらは本当に有名かつ標準的な方式であって、誰も知らない入力方式、入力配列は数多くある。自分の方式「AOUR」もその一つ。
そういうマイナーな方式にも、その中では有名なもの、その中でも誰にも知られていない無名なものなど様々ある。全貌は誰も分からない。
単純に言えば、そういう入力方式は圧倒的に利用者が少ないので注目されない。考案だけはされているが、考案者自身だってほとんど使っていないのではないかと思える入力方式も多数ある。
新しい入力方式が市民権を得ていくには多数の要件があると思っている。
何より、理に適った入力方式であることが第一である。覚えるべきキーが少ない、打鍵数が少なくて高速化できるとか、打鍵する手の負担が減るとか、標準的な入力方式にはない特徴が無ければならない。これがさらに、考案者が学術関係者で十分に検証が行われているとか、有名な企業の研究に基づくものだとかであれば箔が付き、注目度も高くなるので利用する人が増える要因になる。
だが本当に、そういう入力方式は数えるほどしかない。
実装の方法が容易かつ多様であることも必要である。理論としては優れていても、それを普段使っている環境で簡単に実現できるのか。標準的なもの以外での入力方式の変更は、キーの読み替えを行えるアプリケーションを使うのが普通だが、IMEのローマ字カスタマイズで実現できるような入力方式もあって、この方法が安全確実である。
読み替えアプリケーションも、使い方が難しかったり、キーボードのハードウエアに依存したり、大きな変更を伴ったりするような場合はリスクが高く、利用のハードルとなる。
更にもう一つは、入力方式を習得するための手段が用意されているか否かでも、利用してくれるかどうかの状況に影響する。
優れた入力方式だと思うのに、その導入方法や新しい方式の習得方法がわからないものが多く、多くの人はどうやってその方式を習得して良いか分からないので手を出さない。
定期的な見直し、手入れも必要である。
これはフリーソフトなどと同様で、定期的に更新したり、新しい環境での動作を検証しなければ、仮に完全に完成しているものでも古臭い技術や考えによるものだと思われて、注目度が低くなるのではないか。
つまりは、その辺りの要件を満たさなければ、入力方式としては有名にならないし、定着もしない。一旦定着したと思われる、あるいはその特定の区分の中では有名なものであっても、これら要件が満たされていなければやがて使われなくなってしまう。
もし新しい入力方式を考案して、多くの人に試してもらいたい使ってもらいたいならば、上記のような要件を確保することを考えるべきなのである。