石鹼

投稿者: | 2020-07-09

物心ついた頃から普通にずっと、何気なく使っているものというのは、改めて気にすることがないもので、そういうものの一つが固形石鹼である。
幼稚園や小学校の頃、赤いみかんネットに入って水道の蛇口に吊されていて、それで手を洗った記憶も懐かしい。ポンプ容器に入ったボディソープやハンドソープが一般的になる前は、身体を洗うために使っていて、風呂や洗面所に常備されているのが当たり前。銭湯などに行くときも、洗面道具一式の中には必ず含まれていた。髭剃りも専用のジェルやクリームが一般化する前は、その用途としても使った。
液体のソープなど、固形石鹼に代わる物を使い始めたのは何時だったかも、もう曖昧になっているが、気付けば少なくとも自宅では固形石鹼を使う機会はほとんどなくなっていた。10年ほど前に、無添加のシャボン玉石鹼を初めて知った。近くのドラッグストアなどでは置いていなかったので、あちこち探して買い込み、しばらく使っていたが、それもそのうちに飽きたか、やはり液体のソープのほうが便利だということで使わなくなった。
このたび、何がきっかけだったかわからないが、ふと思い立って勝手口の所の箱に詰め込んである大量の石鹼を引っ張り出してみた。贈答品としてもらったもので、使い切れずにあるものだ。何個かはそこから拾い上げて使った記憶もあるが、30年か、あるいはそれ以上前のものも含まれていそうである。使い切れる量でもない。
無添加でない石鹼はそんなに簡単に変質するようなものではなく、それだけ時間が経っても普通に使えそうではあった。メーカー側では3年以上問題ないとのこと。
おそらく過去には普通に使っていた定番品の石鹼とはどんなものだったか、今でもその製品は変わらずにあるのか、さほど高価な物ではないはずなので、新しい物を調達してみようと、調べて行き着いたのが牛乳石鹼である。
「牛乳石鹼、良い石鹼」のCMのフレーズがすぐに思い出された。これまでに使った石鹼の中には絶対にあるはずだが、そもそも石鹼の存在自体が当たり前すぎて、個別にその製品のことを思い出せないものの、赤箱の牛のデザインは何度も目にしている。
牛乳石鹼には、赤箱と青箱があって、香りの違いや特定の油脂成分の有無の違いなどがあるらしい。花王のホワイトなど他の定番品は海外生産になっているのに、牛乳石鹼は今もなお国産ということであるし、最近再び注目されはじめて、赤箱女子という言葉も生まれるなど人気もあるようなので、ドラッグストアで買い求め、少しこれを使ってみることにした。
実際、使い始めて数日程度なので、結果的な違いはまだわからないが、液体石鹼と比較しても特別使い勝手が悪いというものでもなく、手や肌に残る香りやしっとりとした感触が心地よいので当面この石鹼を液体のものに代えて使ってみようと思っているところである。
ところで、牛乳石鹼のCMソングをYouTubeで調べてみると、当初は「花の香り、お乳の泡立ち、牛乳石鹼、良い石鹼」というフレーズだったのが、「お乳の泡立ち」がいつの間にか「豊かな泡立ち」になっているようだった。
言葉狩り的なものなのかとも思ったが、時代に合わせたのかとも思う。お乳の泡立ちと言われても中々イメージが難しい面もある。「お乳」を「ミルク」に変えても良かったようにも思うが、捻りとしては乏しくても「豊かな泡立ち」が現代には合っているというような気もする。