和文は縦書きが基本である。だがそもそも横書き文化の中で発展してきたPCの環境ではこれが中々難しい。
ワープロ専用機の時代も縦書き印刷は出来たが、縦書き入力となると難しく自分の機種では不可能だった。PCのワープロにおいても、MS-DOSの環境では基本的にそれは出来ず、ジャストウィンドウを使った一太郎Ver.5などで辛うじてそれができたくらいではないか。Windowsの時代になって、そういうワープロソフトなどが縦書き入力に対応してきたように思う。
ともあれ今はテキストエディタやワープロソフトで縦書きは普通に出来るのであるが、それでも様々な困難はある。
ワープロの場合は印刷のための用紙設定が基本なので、縦書きの書式もそれに合わせなければならない。普通に設定すると、1行がPCの画面縦方向に納まらないこともあり、1行を見渡すことが出来ずに毎行スクロールが発生するなど視認性が悪い。これを避けるためには、用紙の設定で1行の字数を減らしたり、段組設定をしたり、表示方式を調整したりしなければならない。基本的に、用紙設定と画面表示は関連しているのがワープロの特徴であるからどうしてもそうなる。
一太郎の場合では、用紙への印刷イメージとは別にテキストだけの編集モードがあるので別の入力環境を作ることが可能である。ドラフト編集モードでは縦書きはできないようだが、エディタフェーズなら入力環境を印刷イメージとは完全に切り離して縦書きにしたり1行の字数を見やすいように任意に設定するようなことも可能である。
Wordはこのようなことが一切できないので、とにかく用紙への印刷様式に縛られることになる。
テキストエディタの場合、印刷イメージの制約がないので、入力に都合が良いように自由に入力環境を設定できる。とは言っても、エディタで縦書きができるものは数が少ない。秀丸やWZ EDITORなどの高機能エディタや小説書きなどに特化したエディタくらいしかない。高機能なエディタでも、そもそもエディタはプログラミングのためのツールであるので縦書きを考えられていないもののほうが多い。
たとえばWZ EIDTORの場合は、かなり初期のバージョンから縦書きに対応しており、表示方法も様々にすることができる。原稿用紙を模した枠を表示させることも可能だし、原稿用紙を捲るようにページめくりの機能で、特定の字数・行数単位で画面を表示するようなことも可能である。表示フォントの大きさも自由であるので、見やすい大きさに設定することなどももちろん出来る。1行文字数を原稿用紙に合わせて20字とする事も、下端で折り返すようにすることなどの設定も自由に出来る。
見やすいように行間設定を調整して、フォントの大きさや1行の字数を調整した表示設定を保存できるので、縦書き横書き、簡単に表示方法を切り替えることも可能である。
経験上、縦書きの場合は横書きより行間を空けないと見にくい。これも、ワープロなどでは印刷設定に依存するので調整が難しいが、テキストエディタの場合は自由である。また、入力方向が縦横異なるので、IMEが対応しているかとか、カーソルの動き方向の感覚の入替なども必要であって、そこは表示とは異なった慣れも必要になる。
MS-IMEやATOKのようにそれ自体が縦書きに対応していても、エディタが対応していなければ候補表示は横書きのままなど、条件が揃うのが難しい。WZなどは、縦書き表示の環境が充実しているのに、ATOKの候補表示が横書きのままである。⇒これについては、あるオプションをオフにすることで縦書き候補表示ができるようになった。
横書きに慣れていると、縦書きの場合の視認性、一覧性などが異なるので、おそらくこれも慣れだとは思うが、もどかしく感じることもある。だが小説や縦書き記事などを書く人にとっては原稿用紙と同じ環境、同じ字詰めで書くことが重要だったりするするので、根強いニーズというものがある。テキストエディタは原稿書きに使われる、そういう用途も一般的であるので、より多くのエディタが縦書き対応してくれることを望んでいるのだが、最近は国産ではないエディタも一般的になりつつあって、そういうものに縦書きを期待するのは難しい。
自分の好みの縦書き設定は、一行三十字ほどでの折り返し。原稿用紙のように枠を付けるのも好きだが、ただ行間罫線だけを表示した縦書きも悪くない。原稿用紙に依存する時は一行二十字の設定にするが、ただ縦書きをすべきという場合は一行の字数に拘らず、下端で折り返す設定にしてエディタの画面サイズを適当に調整する。
秀丸では、縦書き表示への切り替えは拡張子毎の設定によることになるので、切替は少し面倒であるが、WZの場合は表示設定を切り替えるだけなので、そこは楽である。
最近のエディタでは、原稿書きを中心目的とした物を除けばMeryというエディタが縦書きに対応している。秀丸などと比べるとまだシンプルなエディタということになるが、縦書きに対応した普通のエディタは少ないので、これは期待できると思っている。