ATOKの学習機能

投稿者: | 2017-02-28

日本語入力システムにはユーザ辞書機能があって、そこに任意の単語を登録して変換に活用できるというのは誰でも知っていることで、最もよく使われている学習機能である。この機能は、ワープロ専用機にもあり、専用機はそもそも変換辞書が充実していなかったので、おそらく今よりよく活用されていた。
ATOKには、そういうユーザ登録辞書の他にも各種の変換辞書を持っていたり、それを自由に組み合わせたりできるのは言うまでもないが、それに加えて自動的にユーザの変換の癖を習得する学習機能があって、使い込んでいるうちに自然とユーザの書きぶりに近づいてくる。
自分も永くATOKを使っているが、学習されていない状態で使うATOKより使い込んで学習を重ねたATOKのほうが一応使いやすい。辞書や学習機能が成長してきたなと感じることはないが、結果的には自分のかな漢字変換ポリシーのようなものが反映されてきているのだと思う。
無論、それはそれで便利ではあるのだが、必ずしもプラス面だけではない。
例えばユーザ辞書に関しては、自動的に単語が登録されることがある。これは意図せずに登録されてしまうので、本来そういう変換をしたくないという単語、誤った変換も登録される。辞書に登録されるということは、それ以後の変換にそういう候補が表示されるということであるから、余計な変換候補が上位に表示されてしまうこともあり、ノイズが増える。もちろん、登録されてしまった語を削除したり編集したりする機能はあるが、こまめにそういう作業を行うのは難しく、放っておくとどんどん単語が登録されていく。
ATOKは既に標準辞書やその他の変換辞書、変換方式が多様化して基本機能が優れているので、こういう学習機能に頼らなくてもそれなりに快適な変換が出来る。むしろ、変換の癖を出さない方が仕事上の文章などでは適していることもある。
推測変換機能に関しても同様のことが言える。
推測変換は、入力した読みに応じて、変換操作をする前から返還候補を表示してくれる機能で、これも省入力などの辞書を別に持っているし、省入力データを学習させることも出来る。
省入力データは、辞書への単語登録のように一つ一つ登録することもできるが、特定のフォルダの文書ファイルやクリップボードにコピーしたデータ、メールソフト、URLを指定してRSSなどのデータからまとめて学習させることも可能である。時間を指定して定期的に巡回学習させるというようなことも可能だ。また、変換を行った確定履歴からも推測変換の候補とすることができる。
こういう学習ができるのはまさに、これまで自分で書いた文章から必要な候補を自動登録してくれるということなので、短時間で変換の癖を習得してくれるということで便利で効果もある。ただ、学習させる素材はきちんと内容を整理してあるものでないと、メールの文などでは相手のメールの引用、つまり他人の文章が含まれていたり、雑多な素材から学習させてしまうと雑多な内容が候補として登録されてしまうので、やはりノイズが増えてしまう。
確定履歴に関しては、学習への影響というより、書いた文章で変換した履歴がしばらくそのまま残ることになるので、一覧表示させてしまうとどんな文章を書いていたのかがある程度わかってしまうことへの危惧がある。他人も使うPCなどでは、そういう履歴を残しておくのは情報漏洩にもつながるのではないか。
このような学習機能は、設定をきちんと行えば不必要な機能は使わないこともできるし、登録された情報をクリアすることも可能である。ただし、ほとんどの機能はデフォルトでオンの状態になっていて、こうして説明しただけでも各種の機能があるので、それらを理解して正しく設定するのは、ATOKのヘビーなユーザでもなければほとんど不可能である。
繰り返しになるが、ATOKの変換エンジンはそのままで優れているので、こういう学習機能に深く頼らなくても十分にその効果が実感できる。使わないという選択をすることもできるが、一時的に学習する、メモリ上のみで学習するなどのオプションもあるので、適切な使い分けをすると、学習の効果を実感して効率の良い変換を行いながらも、履歴には残さず安心できるという運用も可能なのではないか。