プリンタとインクの罠

投稿者: | 2019-04-06

ワープロ専用機は、インクリボンで用紙に印刷をする仕組だった。黒が標準だが、インクリボンを交換することで別の色も印刷できた。その色の箇所にマーキングをして印刷をそこでストップさせ、赤や青のインクリボンに交換して印字を始めるという、今から考えると信じられないような原始的な方法が使われていた。混色などは不可能で、インクリボンの色しか出せない。
そんなに面倒な物なので、パソコンで使うカラーのインクジェットプリンタを使わない限りは、黒一色の文書しか作ることがなかった。
そういう時代を経てきているので、多色の文書には自分としてはまだ特別な感じがあるものの、今では当たり前のように出力するようになった。
今は家庭でも写真も難なく印刷できるようなカラーのインクジェットプリンタが当たり前で、マゼンタ、イエロー、シアンにブラックを加えた4色インクが基本。Canonの場合、これにさらに顔料ブラックを加えて5色、更にグレーを加えて6色という製品もある。インクはカラー3色が一つとブラックが別になっているタイプもあれば、それぞれ各色が独立したインクになっている物もあって、概ね後者のほうが一般的、売れ筋製品である。
独立のインクタンクは、そのインクの色が消耗したときにそれだけ交換できるので経済的と言われているが、何色もあるのでそれぞれ交換すると純正品で4~5千円もかかる。何回かインクを交換するだけでプリンタ本体の購入価格に匹敵する。そういう商売なのである。
最近のプリンタも同じだと思うが、インクジェットはその機構上インクが乾燥してしまわないように自動メンテナンスが働き、実際インクを使って印刷をしなくてもインクがひとりでに減っていくようになっている。いざ使おうと思った時にほとんど使っていないのに高価なインクを交換しなければならないこともある。
自分が使っている機種は、1色でもインクを交換すると、全色のメンテナンスを4~5分かけて行う。残りが少なくなっている場合、折角1色交換したのにメンテナンスでインクが消耗されて別のインクを交換しなければならなくなることもある。そのインクを交換したら、再び全色メンテナンスでまた何分も待たされるという始末。A4用紙1枚の出力が何秒と言われているが、それはプリンタの条件が最良状態でないと到底そんな値は出ないと思った方が良い。
実際、インクはタンクに残っているのに、一定期間使用か一定回数の使用で空になったというメッセージが出るようになっているらしい。尤も、メーカー側の言い分としては、そうでもしないとインクが乾燥したりして故障の原因になるという。メンテナンスで吸い出されたインクは廃インク吸収体というフェルトか何かの媒体に吸収されるが、これもまた一定回数が使われるとあるとき突然警告が出てプリンタ自体が使えなくなる仕組であるらしい。もうそうなったら、修理や部品交換に出すより新機種を購入したほうが安い。
プリンタはそういう可動部品も消耗品もあるために、正直なところ厄介な機械である。自分の所のものでも2011年頃の機種だが、一部の紙送りがうまく行かなくなってしまっていたりもして、もうそろそろ製品の寿命なのではないかと思えるくらいである。
プリンタを所有するということは、使用頻度や使用目的をよく考えて購入したほうがいい。少なくとも高価なフラッグシップ製品ではなく、使う機能だけを備えた物で十分である。たとえば自分としては、インクは6色も必要がなく、標準的な5色のもので十分であると感じている。
ワープロの時代が良かったという訳ではないが、印刷にかかるコストと労力はもう少し負担が少ないようにならないものかと思う。