昔は何か物書きをすると言えば、何かの用紙に何かの筆記具を使うしかなかったが、今ではPCでキーボードを打鍵することにより書くという手段も増え、むしろそれが一般的になった。
では、その書く環境とは一体どのような物がどのように揃っていると良いのかを改めて考えてみることにした。
まずはハードウエアで、その中心となるのがPCである。多分、WindowsでもMacでも良いのだがMacのことはよく知らないのでWindowsとすると、ノートでもデスクトップでも、文章を書くという作業に関しては普通にWindowsが動作するスペックがあれば基本的には十分である。文章を書くという作業はPCが行う作業の中ではリソースを多く必要としない、軽い作業だからである。
ただし、最低スペックのPCというのは、別の意味で避けた方が良い。Windowsやアプリケーションの起動など、基本的な動作にストレスがある状態だと作業が満足に出来ない。何年も使い続けたり中古のPCでHDDなどが劣化してきているものも同様の理由で避けた方が良い。購入する場合は新品で最新のモデルというのが基本で、最上級クラスのモデルでなくても良いが、中堅クラスのものにしたいところ。文章書き専用マシンとする場合なら低スペック級でも良さそうだが、関連する調べ物をしたりするのにはWebも快適に閲覧できる必要があるし、アプリケーションのアップデートをするのにもそれなりの性能が必要であるためである。
HDD/SSDも、余裕があればあるほど良いが、データは外部媒体に保存するという運用を決められるのであれば、Windowsが満足に動作するのに十分な容量があれば良い。
それ以外では、Wi-Fiがどうとか、拡張性の点でUSBポートが幾つあるかなど拘るべき点はあるのだが、これらはどれも文章書き作業特有の部分ではなく、PCそのものとして他の用途などと共に要不要を考えるべき点である。
ノートかデスクトップかについても同様で、配置場所の制約によるところが第一だが、基本的にこれはどちらでも良い。後述するような周辺機器の環境に依存して、必要な環境を整えられるのであれば、拡張性が劣るとされているノートPCやタブレットPCでも問題ない。
モニター環境は、ある程度の画面サイズを確保すべきである。デスクトップPCならそれなりの大きさのモニターが備わっていると思うが、ノートPCの場合は総じて液晶の画面は小さい。これは是非外付けのモニターを取り付けることを考えるべきである。
文章を書くということにかんしては、さほどそういうモニターの大きさは要らないとも考えられるが、ある程度の大きさを確保して書いた物全体というか、広い範囲を見渡しながら作業が出来る方が良い。無論、書く作業以外のWeb閲覧やその他の用途のためでもある。21インチかそれ以上の大きさの物が良いのではないかと思うが、あまり大きすぎても見づらいようなきもする。色合いがきちんとしているものであることなど、基本的な性能の良し悪しで選ぶのが間違いない。
文章を入力するためにはキーボードは必須であって、この環境を整えることもまた重要である。キーピッチが確保され、打鍵感が自分に合う物が良いのだが、好みと言ってしまえばそれまでである。
ノートPCのパンタグラフキーボードも、これが良いという人も少なくないが、大きさの制約があるためにキーピッチが確保されていなかったりして打鍵しやすいと思える物は少ない。この場合は、モニター同様に外付けのキーボードを使うことを考えるべきである。
デスクトップPCは、基本的に外付けのキーボードになると思うが、それで満足できるならそれで良いし、更に打鍵感などの付加価値を求めるなら、メカニカルや静電容量無接点などの機構のものから選択する。そうなると、テンキーの有無、配列をUS配列とするかJIS配列とするかや配色なども含めて種々の選択肢が増えてくる。
キーボードと同様にマウスも、PCを使うに当たっては必須の機器となっている。ノートPCではタッチパッド等のポインティングデバイスが備わっているが、マウスの操作感には及ばないので、ノートPCの場合であってもマウスは用意することを考えたい。文章書きにおいても、使う場面は多くある。
これらのハードウエアは、どこにどのように配置するかはそれぞれの場所の制約によるのだが、良い姿勢が確保できるような配置にしなければ、文章書きのような長時間の作業については問題が生じてくる。
そういう体勢で作業ができるようにするために、PCの専用デスクや適切な椅子などもあったほうが良い場合もある。
ソフトウエアの環境としては、Windows OSがまずあって、そこで動作するアプリケーションが必要である。標準の「メモ帳」など、OSだけあれば書くという事自体はできるようになるし、Web上で、すなわちブラウザを使ったクラウド的なアプリケーションを使うという手段もあるが、やはり従来からある文章書きのアプリケーションを使うのが一般的と思える。
文章書きに用いるアプリケーションと言えば、まずはワープロソフトである。普通の市販PCにはMS Officeを最初から搭載している物も多い。Wordを使うというのは一般的な選択肢で、他に有名なワープロソフトとしてはLibreOfficeもあるが、和文の文章書き・編集のためには何といっても一太郎がある。
一太郎は言わずと知れた老舗のワープロソフトで、文章書きのことをきちんと考えて毎年バージョンアップされている。IMEのATOKを同梱し、他にも文書作成に必要なアプリケーションを中心にパッケージが構成されて、上位パッケージ一つがあれば、もう他に何もアプリケーションは買いそろえなくても良いと言えるほどの充実ぶりである。基本となる文章作成作業もフェーズに分けてそれに見合った機能が備えられていたり、ある程度のカスタマイズ性もあるなど、ワープロソフトをその選択肢とするなら、まずは一太郎で考えるのが最良であると思える。
和文ワープロは、縦書きができるものが普通で、WordもLibreOfficeもそれに対応はしているものの、やはり国産開発のアプリケーションである一太郎においての縦書き対応には匹敵しないと思える。
ワープロと同様に、文章書きに必要なアプリケーションとしてはテキストエディタがある。文書として印刷するにはワープロソフトでなければならないが、文章を書くという作業に関してはテキストエディタでも十分であり、むしろワープロよりも高度な文字列編集機能を備えている高機能エディタを使うこと、あるいはワープロソフトと併用することで、PC環境におけるアプリケーションは文章書きという分野の中では完結する。
WZ EDITORなどは高度な印刷機能も備え、一般的な文書ならワープロソフトの印刷機能にも劣らないような結果を提供してくれるが、使用方法に癖があって自分で調べて解決するのが難しい初心者にはハードルが高いところもある。秀丸など、他の高機能エディタも選択肢として、とにかく原稿書きのような作業をするならテキストエディタも使うべきである。
秀丸やWZは、縦書き表示、縦書き入力にもきちんと対応されていて、そもそもテキストエディタはワープロソフトよりもずっとカスタマイズ性が高いので、表示を調整することでワープロよりも見やすい環境で縦書き文章を扱うことが出来るのである。
テキストエディタが優れている点は、ワープロソフトに比較してとにかく快適であること。起動や動作も機敏で、繰り返しになるがカスタマイズ性が高い。任意のキーボード操作を割り当てたり、マクロを使って基本コマンドの機能を拡張したりもできるし、配色の変更などはもちろん、何をどう表示するかなどは、そこまで必要なのかというほど細かい設定項目もあって、ユーザの好みの環境を作り出せるのである。
ハードウエアとソフトウエア(アプリケーション)、他にも要素があるかもしれないし、これからPCで文章書きを始めるという場合、どういう点に拘ったら良いのかというと、だいたいそういう事なのである。