雑感長文KBD

投稿者: | 2022-01-10
windowskeyboard

自分のワープロ専用機では、ブラインドタッチを覚えた。
増田忠氏のキーボード練習帳なる書籍がわかりやすく、このとおりにやっていれば覚えられそうだと思って、それを書店で購入して独習した。ただ、その頃は既に両手の各指で打鍵は出来るような状態でもあって、正しい指使いを覚えて盤面を見ずに打鍵できるようになるまでにそんなに時間はかからなかった。
増田氏の方法では、1日に15分から30分の練習で少しずつ、確か2週間くらいで習得するプログラムだった。練習して出来るようになったら、あとは少しずつ、単語から文章へ実践で用いる。

その時もそうだったが、一通り覚えたら暗唱するというか、盤面がない所でも、エアキーボードで打鍵してみるのをしばらくやってみるのがいい。AOURの定義を決めて、自分でその入力方式を覚えるときも、一通り打鍵してみたら、あとはエアキーボードで五十音全てを打鍵してみるというようなことをやってみていた。
AOURは、Dvorak配列由来の部分があるので母音の位置がわかりやすく、その五つの母音さえ覚えたら、あとは子音の位置を覚えるだけ。母音五つに子音が15個くらい。これで覚えるキー位置は20個。撥音拡張、二重母音拡張などあとはルールを覚えるだけで良いから、段階的に習得していくということであるなら、実際覚えることはそんなにないのかもしれない。

もちろん、これにはやはりブラインドタッチができるという要件があった。
ブラインドタッチは習得しておくべきことだと思っているが、周りを見ても実際出来るという人はそんなに多くない。ブラインドタッチができるから仕事ができるのかというと必ずしもそれとイコールではないが、でも入力がそれで的確で速い人は、それなりに優位な部分はあると思う。

自分がブラインドタッチを習得したのは学生の頃だったから、仕事に就いた時にはその技術は既に使えていたはずだが、まだ仕事のほうでは完全にそういうPCなどの機器が十分に導入されていないような時代でもあったから、その技能を活かせるようになるまでには少し時間を要したのである。
それでもその頃は、これから自分等より後に入ってくる世代は皆、キーボードは基本的な技能として習得していて、ブラインドタッチなど当然に出来るものだと思っていたが、実際はそうでもなかった。そこから何年も経って、今になってみると皆スマホのフリック入力だけが得意になって、キーボードのブラインドタッチはできないという若者のほうが多いのが実情というので驚く。

ブラインドタッチの技能は十分に注目されることはなく、キーボード入力は盤面を見て入力しても結果は同じなので、どんな入力方法でも結果として速ければ、十分な速度があれば良いということになってきた。ブラインドタッチの習得を回避した者の陰謀かとさえ思えるし、そういう人からしたら、結局見ても見なくても必要な速度で打鍵して入力できたらそれでいいのではないかということだろう。ある意味尤もではある。
実際には、速度だけではない利点はあるのだが、そういう都合の悪い部分は無視されている。

ブラインドタッチができないという人は、おそらく無刻印キーボードは使えないだろう。もちろん、そういう人は無刻印キーボードなど選ぶことはないし、たいていそういう人は無刻印キーボードの利点の無さだとか欠点などばかりを挙げて批判してくる。
無刻印キーボードは、少なくともブラインドタッチができないと使いこなすのは難しい。自分の場合、最初にHHKBで選ぶべき時点でブラインドタッチはできていたが、US配列自体が初めてだったり、特殊なHHKBの操作には不安が大きすぎたので、最初のHHKB選択の時点では無刻印は選べなかった。それから15年くらい経って、次のHHKB選択時には愈々無刻印を選んだ。結果、何の問題もなく使いこなすことが出来ている。

いや、本当に何の問題もないかというと、それは正しくない。実際数字の打鍵は怪しいし、使用頻度の低い記号の入力も怪しい。数字キーで入力する記号も、やはり怪しい。目的のキーを1度で正確に打鍵できるかというと、それまた怪しい。ホームポジションに指を置いてみて初めて、目的のキーに到達するのである。
だからパスワードなどの入力は非常に怪しい。これで銀行など何度か間違えたらロックされてしまうような重要度の高いパスワードを扱うのは危険である。そういう場合は普通のキーボードを使うべきであって、無刻印キーボードに依存すべきではない。
なので、無刻印キーボードは全てそれが良いかというとそうでもない。

無刻印キーボードの良いところは、デザイン的なものが一つ。盤面に刻印・印字がないのはやはり美しい。他人に、自分はブラインドタッチが完璧に出来るんだとアピールして自己満足に浸れるという点もある。ブラインドタッチが完璧でない人が、ブラインドタッチを確実に習得するために無刻印を使うという荒行もあるかもしれないが、それは少数だろう。

自分の場合はそれに加えて、ローマ字入力ではない入力方式を使っていて、アルファベットのキー位置の意味を成さないということもあるかもしれない。これはそのキーの位置ということで意味的なものはなく、右手のホームのこの位置、とか、ここから上の段のこの位置とか、それだけ覚えれば良いのである。説明の都合上はQWERTYのキー位置で示すが、本当は、左手中指上段【E】、とか右手人差し指伸ばし位置下段【N】ということで示せれば良いのであるから。

打鍵の調子が良いのは手が十分に温まっているときで、例えば風呂上がりなどがそれである。十分快適に打鍵できる。手はなるべく冷やさないほうが良い。あるいは、これから打鍵する、文字を入力するという気分が十分にのっているときも調子は良い。そういう時はおそらく10分換算で千数百字のペースでの文字入力が出来ている。
確かに、当初はブラインドタッチと共に、入力速度をいかに早くできるかということも重要だった。まだその頃は手書きの速度を上回るくらいを目標にしていた。増田氏の書籍でも手書きの2倍くらいの速度が目標だとされていたはずだ。

10分500~600字くらいあればそれが達成できるとあったような記憶である。別の書籍だったかもしれない。だが自分は更にその倍くらいの入力速度がでるようになって、今はこの入力方式においてもそれが確保できていると思っている。こういう文章を書くときは、時々推敲も混じりながら書いているので完全ではないが、ただ黙って入力するだけなら、おそらくそういう速度での長文入力の打鍵は出来ているはずなのである。

長文入力に関して言えば、キーボードの押下圧や打鍵感にも関係が深い。Realforceの変荷重タイプはそれがよく考えられていて、打鍵力の弱い小指が担当するキーは軽く30g、それ以外のキーは標準的な45g荷重に調整されている。最初にRealforceを使ったのも変荷重タイプで、その打鍵感が最適に感じたのはそのせいか。もちろん、変荷重タイプのキーボードを使う前提も、ブラインドタッチができること、すなわちキーの担当指が決まっている必要がある。
一般的な等荷重もまた45gの押下圧では快適であるが、変荷重が自然にタイピングできるとすると、等荷重タイプのものは指が最適な打鍵の押下圧を調整しているということにもなる。すなわち小指の負担は指の側で調整されているのかもしれない。等荷重タイプの打鍵感が長文入力に向かないということもなく、これはまたこれで快適であるのだが、本当に長文入力で比較すると、最終的には変荷重タイプの方が指の負担は相対的に少なくなるのではないかと思っている。

RealforceもHHKBも同じ静電容量無接点キースイッチで、標準荷重は45gである。当初、その45gでもHHKB Pro2のそれは随分重く感じていた。経年劣化というのがあるのかどうかわからないが、最初からずっとそういう感じで、それもまたRealforceのほうが自分に合っていると思わせてくれた要因でもあった。
だが、最近購入したHybrid Type-Sの打鍵感は同じ等荷重45gのRealforceより柔らかく快適で、HHKB Pro2の重さとは全く異なっていた。この打鍵感は等荷重であっても長文入力には都合が良いと感じていて、併用している自分は、特に長文入力をする場合にはHHKBのほうを好んで使っている。
たとえばこの文章なども比較のためにRealforceを使う部分以外はHHKBで打鍵して入力しているのである。

HHKBは、コンパクトな60%キーボードでキー数も67キーしかない。カーソルキー、矢印キーさえもなく、その操作はFnキーとの組み合わせで実現する。最初は当然、この操作が難しく煩わしいと感じていたのであるが、そこは慣れであって、一旦覚えてしまえばほとんど普通の打鍵操作においては問題は生じない。HHKB Pro2もだいぶ使い込んではいたので、その辺りの操作にも違和感はなかった。
ただし、Fnキーとそのキーの操作、さらにもう一つのキーを組み合わせる必要がある場合などは操作が困難である。たとえばファンクションキーもFnキーとの組み合わせなので、それらキーともう一つ何かキー操作となると途端に難しくなる。

もっと端的な例で言えば、カーソルキーとShiftキーでの範囲選択なども、3キーの同時押し作業となるので、これはなかなか、ぱっと想起して操作をするのが困難であることもあるのである。

かな漢字変換に関しては、ずっとATOKである。おそらく今後もずっとATOKである。比較のためにGoogle日本語入力も使うことはある。
何より、ここ15年はローマ字入力のカスタマイズによって別の入力方式にしてしまっているので、もう基本的にこれを変えられない状態である。
そのような入力方式の変更は、ほとんどの人が見向きもしない。興味はあっても、新しい方式を覚えるのがまず面倒臭いのと、それによりキーボード習得がほとんどゼロからになるので、それを嫌う。違った方式に変更する手間と、仮にそれが使えるとしても今後の別のPCでもそれが使えるのか、他の機器でも使えるのか、などデメリットばかりが目立ってくる。

デメリットについては、正にその通りで、それを理解してなお変更してもいいという人だけが、少し時間をかけてローマ字入力とは違った別の方式で高効率入力を使うことが出来るのである。
自分の場合もローマ字入力と同じ速度に達するまでは実際何年もかかったのであるが、それでも初期の段階で実用的な速度に達することができたので、あとは速度を向上させるだけであった。

ところで、かな漢字変換のオンオフ、IMEのかな入力と英数入力の切り替え、要するに日本語入力状態への切り替えは、多くの人はどのキーを使っているのか。JISキーボードにおいては、半角/全角キーでの切り替えが多いのか、変換キーでの切り替えが多いのか、おそらくそのどちらかではないのかと思う。もちろん、IMEオンオフのキーはIMEの機能などでカスタマイズして任意のキーに割り当てることもできる。
JIS配列においてはそういうキーを使っているのであろうと思うが、US配列の場合はどうするのか。半角/全角キーも変換キーも、US配列にはないのである。

US配列のキーボードでは、Alt+`のキーにその機能が割り当てられている。すなわち、US配列でもIMEをオンオフにする手段はきちんと備えられているということである。標準的なUS配列では、JIS配列で言う半角/全角キーの位置にこの`があるので、Altキーとの組み合わせになるだけでその標準的なキーバインドでも問題はないと思うし、迷いも少ない。ただしHHKBの場合はこのキーの位置が全く反対側になってしまう。
US配列ユーザは、この標準の切替キーで使っている人が少なくないと思うが、自分の場合はCtrl+Spaceに割り当てている。CtrlキーはAの横にしてCapsと入れ替えるので、この割当だとホームポジションから手を動かさずに切替が行えて便利なのである。なので、JIS配列を使うときでもこの割当にしてIMEのオンオフ切替を行うようにしているくらいである。

連休でキーボードの打鍵の調子が良いときにこれだけ書いてきたので、もう雑文を掲載するが如く、これで一つの記事にしておくのである。