自分の入力方式は、かな入力ではない。ローマ字入力でもない。だがIMEのモードとしてはローマ字入力である。行段系の、子音と母音の組み合わせを基本とした入力という点ではローマ字入力の仲間ではあるし、Dvorak配列をベースとしたローマ字入力に拡張を加えた物ということもできる。
こんな方式を使っている人は、希であると思う。
2007年の考案以前は、数年間AZIKを使っていた。ATOKのローマ字定義カスタマイズでAZIKにして使っていた。しかしそれでは飽き足らず、もっと以前から知っていたSKY配列や、AZIKとの関連で、Dvorak配列をベースにしたACTを実装してみたいと思ったが、ACTを実装するには、キーボードのレイアウト変更が必要であった。
キーボードのレイアウト変更は、すなわち最初からDvorak配列のキーボードを使うようなものだが、そんなハードウエアは簡単には入手できないし、レイアウト変更ソフトも、後で戻せなくなったりしたら大変なので手を出しにくい。
AZIKの時と同様に、ローマ字定義のカスタマイズで実装したかったのである。
だが当時はGoogle日本語入力も無く、さらにはgACT10も公開されていない時であったので、結局はATOKの制約にも合うように自分で考案するしかなかった。ACTてAZIKの拡張要素を参考にして定義を作り、拡張のルールなども決め、それをやがてAOURとも名付けて使ってみるようになった。
その辺の考案経過は、サイトのほうに詳しい。
https://aourkbd.net/kouankeika.html
おそらく、AOURのユーザは自分だけだろう。
ローマ字入力よりは効率的に違いないが、習得のリスクを伴いながらこんな独自の方式に切り替えようとする人など、まず居ないと思う。定義を公開しているので、試してくれた方、少し使ってみてくれた方はいるかもしれない。
だが、Dvorak配列をベースにした行段系拡張入力は、gACT10がその後に同様の考えに基づいて公開されているので、Google日本語入力でこの方式を使うユーザはそれなりにいるのではないかと思う。おそらく、行段系ではこれが最強と思える入力方式であるが、配列変更ソフトを使わない限りは、ATOKの制約でローマ字カスタマイズでは実装できない。
AOURは、そもそもATOKが開発環境みたいなものなので、ATOKで実装できる。それを前提に作ったものであるから当然である。ATOKで実装できるDvorak系ローマ字定義は、AOURのほかはほとんどないと思っている。
標準のDvrak配列とは、句読点部分の関係キー3つと、KとC相当キーの入替を行っている。
便利な拡張
AOURには、各種の拡張入力を採用している。
基本となっている二重母音と撥音節の拡張は特に便利だ。これはAZIKを使っているときにそれを知って、AOURでも当初から取り入れているものである。
この2種類の拡張定義と、一部拗音についてはその裏打ち定義も加えて、この分だけで相当数の打鍵数減を図ることができる。Dvorak配列は母音が左手ホームに五つ並んでいることもあって拡張の定義のルールも整理しやすく、従って習得もし易い。
促音+カサタパ行の定義のうちカタ行の定義についても意外に頻度高く使うので、この拡張定義ルールも押さえておきたい。これによっても音節当たり1打鍵の削減になるので、文章中に出てくる分で、二重母音や撥音節と共に少ない打鍵で同じ入力ができるようになることに貢献している。
Mictrosoft IME+DvorakJによるAOUR
普段はATOKでAOURだが、Windows 10環境でMS-IMEを使わざるを得ない場合にAOURをどうやって使うかといえば、DvorakJなど配列変更ソフトを活用するしかない。MS-IMEのローマ字定義カスタマイズは定義ファイルのインポートなどができないうえに、定義数上限が約350くらいしかなく、AOURの約550定義を完全に実装するには足りないのである。
配列変更ソフトを介しているということで、ミリ秒的な単位では直接入力と時間の差があるかもしれないが、体感するほど気になるわけではない。
ずっとATOKばかりを使ってきて、またAOURが使えない関係もあってMS-IMEはほとんど使ったことがなかったが、DvorakJを介することで標準のIMEを使える。
ATOKと比較すると、変換精度が低いとされるMS-IMEだが、平易な文章入力においては、特別ストレスを感じるようなこともなく、入力や作業で困るということはない。操作もATOK型にしているので、全て同一というわけではないが、基本的なキー操作で迷うこともほとんどない。拘りがなければ、このIMEで和文入力に問題があるわけではない。
多くの人が使っている標準のものという安心感みたいなものも生じる。
だがしばらく使っていると、DvorakJが突如効かなくなって普通のローマ字入力しかできない状態になることもあった。DvorakJを再起動すると再びAOURになるが、こういう事象は配列変更ソフトの宿命なのか。キー操作をフックするのでマルウエアとして認識される可能性もあり、不安要素もある。
IMEからの入力をどう処理するかで、一部のアプリケーション、一部のダイアログボックスでの認識もよくない場合もあるので、注意も必要である。これは、IMEオフの状態でも影響を受ける場合もありそうである。
さらにしばらく使っていると不安にもなってくるのは、やはりATOKではないからで、確かに和文入力においては問題が無いが、それは問題が無いということだけであって、快適な和文入力、快適なかな漢字変換とはまた違っているのである。再変換の機能の違いなども気になる。ATOKのようなわけにはいかない。