特別なキーボード感
Realforceも然る事ながら、特別なキーボードという点においては、やはりHHKBだろうという感じはある。自分が使っているUS配列の無刻印(白)である。
HHKBに無刻印モデルがあるというのは、初期の頃から知っていた。だが初めてのHHKBを購入する時は無刻印モデルの選択には至らなかった。
それは、初のUS配列でもあることやHHKB自体が特殊な配列であることからである。墨色モデルにしたので、刻印は見えづらく、これもある意味擬似的な無刻印だろうということで、そのモデルにしたのである。
だが2台目のHHKBは、無刻印にした。それも白モデルのほうである。どうせ無刻印にするのなら、白モデルのほうが明確に無刻印だということがわかるからである。誰に見せびらかすというわけでもないが、そのほうが自分としても無刻印を使いこなしているのだという満足感が得られると思ったのである。
他のキーボードでは、無刻印モデルがきちんと定番商品として揃っている製品は、ほぼない。HHKBも、US配列のモデルだけである。JIS配列の場合は、無刻印キートップを買い足すかどうにかして、雪モデルというのも最近限定で出ているようではあるが、JIS配列モデルには定番品での無刻印は無いようだ。
US配列というだけで、普通のJIS配列ユーザにはハードルが高く、それに加えて無刻印モデルとなると、さらにユーザが限定されるのである。
文章書きのためのキーボード
キーボードに拘るというと、どちらかと言えばプログラマなどコーディングをする人のイメージが強いかも知れない。もちろんそういう仕事をする人は職業的にキーボードを使って文字入力をするので、キーボードは重要である。しかし当然に、ブロガー、小説書きだけではなく一般の事務に至っても文章を書くに当たってはキーボードを使う訳なので、そのキーボードに拘ってはならないということはない。むしろ、プログラマと同様に文字入力をするインターフェースであるキーボードには拘るべきなのだが、前者に比較するとそういうためのキーボードの話が少ない。
要するに、キーボードへの拘りは、文章書きではなくコーディングのためなのではないかと錯覚してしまいがちである。文章書きというよりは、あるいはタイピングの凄い人向けというイメージもある。
文章書きのためにもキーボードは重要なので、プログラマの人々などキーボードに拘る人が使うキーボードがそのまま、文章を書くにも有効になる場合が多い。テキストエディタが元々はプログラマのためのツールだったのが、今では文章書きのツールとしても十分に使われるようになっているのと同じである。
キーボードも、用途にはほとんど関係なく、文字入力をする人、それも多めに、あるいは高速に入力をする人にとっては、良いキーボードを選んで使うべきである。
US配列というと、これもまたプログラマなどアルファベット文化の仕事をする人向けのものというイメージがあるが、JIS配列でかな入力を使うのでないかぎり、すなわちローマ字入力などアルファベットを基調とした入力方式を使うのであれば、US配列で全く問題が無い。多少のキー定義のカスタマイズをすると更に便利になるのであるが、僅かな手間を惜しんでいるのか、日本語には日本語向けのJISキーボードでなければならないという観念が強いのか、US配列は文系作業には向かないように思われている。
実際、自分はそんなに大量に文章書きをするという訳でもないかも知れないが、それなりに長文入力はしているつもりであって、もう15年以上もほとんどUS配列ばかりを使ってそういう作業をしているので、JIS配列でなければ快適な和文入力ができないということは、全くない。寧ろ、US配列のほうが快適であるとさえ思っている。
簡単に言えば、US配列の方がキー配置のバランスが良い。記号の配列の妥当性や、Enterなどのキーがホームポジションに近く打鍵しやすいということである。
こういう特性は、プログラマだけが受けられるものではなく、同じアルファベットを用いてローマ字入力で和文入力をする場合だって同様に、その恩恵を受けることができるのであるが、US配列を使っている人で文章書きを主な職業にしているという人には、そんなに多く出会えない。
周りも僅かに、US配列のユーザはいるとしても、やはり文章書きが主な仕事ではなくプログラミングなど理系の仕事のほうがメインという場合がほとんどである。
US配列の方が良い、とまでは一概には言えないのであるが、それでもその方が良い面も少なくない。US配列の特性を理解して使えるのであれば、US配列のほうが良いのである。
文章書きこそUS配列
結局、続けて同じようなことを書くのだが、文章書きこそUS配列のキーボードを使うべきではないかという話。
我が国で流通しているキーボードの配列は一般的なJIS配列のほかに、US配列というのがある。英語配列とか、英語キーボードなどとも呼ばれるが、英語の入力しかできないという意味ではないので、自分はUS配列と呼ぶことにしている。
JIS配列と比較すると、次のような特徴がある。
・かな刻印が無い。
・Enterキーが横長形状、1列ホームポジションに近い。
・BSキーや右ShiftがJIS配列より大きい。
・SpaceキーがJIS配列よりだいぶ大きい。
・半角/全角、変換、無変換、カタカナ/ひらがな のキーがない。
・括弧のキー始まりと終わりのが横方向に並んでいる。
・コロンとセミコロン、シングルとダブル引用符が同じキーに配置。
・ホームポジション中央とキーボード中央がほぼ一致。
アルファベットの配列はJIS配列と同じだが、記号の配列はJIS配列とはそれなりに異なっている。@の位置が数字2のキーのShiftであるなど。
記号などはJIS配列より合理的な配置になっているので、コーディングなどにより便利と考えられて好まれている。
しかし、我が国での標準的なキーボード配列はJIS配列のほうなので、US配列は選択肢が少なく、普及度は高くない。周りで使っている人が少ない、ノートPCなどもUS配列が選べないモデルがほとんどであるなどの理由で、その互換性とか標準性のためにJIS配列を選ぶ人が多い。一般的なユーザは配列を気にすること比較することもなく、JIS配列が当たり前だと思ってUS配列のことを知らない。
そういう特徴、違いからすると、IMEを使った和文入力には不便なのではないかという危惧がある。たとえば半角/全角キーがないのでどうやってIMEのオンオフをするのか、変換操作に支障は無いのか、など。
JISかな入力をする場合は、キーの列数の違いなどで、右端列のキーの位置が変わるし、かな刻印もないので、この場合に限ってはUS配列は不便である。だが、ローマ字入力では、アルファベットしか使わないので、US配列で問題ない。
IMEのオンオフ切替は、JIS配列で半角/全角の位置にある`キーとAltキーを組み合わせたキーバインドに割り当てられているので、基本的にそれで問題ないのであるが、それで操作しにくい場合は、IMEのキー定義カスタマイズなどの方法で、Ctrl+Spaceなど使いやすい定義に変更することで支障が無くなる。
そのほか、変換操作などはSpaceキーで行うので、それで別に変換キーが無くても問題ない。無変換キーやカタ/ひらキーなどは、多分そもそも使うことが無いか、使用頻度は少ないと思われる。
さて、そんなUS配列のほうがどうして和文入力の作業においてもJIS配列より良いと思うのかと言えば、上記の特徴にあるとおりで、ホームポジションのバランスが良いことや、Enterキーがホームポジションに近いことなど、JIS配列に比較して打鍵しやすいのである。キーボードの中央とホームポジション中央が一緒になっているのも、おそらく人間工学的に正しい。
JIS配列でも、もちろんそれが悪いといえるほどではないとしても、ある程度両方を使い比べてみるとUS配列のほうが自然な入力ができることに気付くはずである。
すなわち、ローマ字入力などアルファベット基調の入力方式においては、US配列のほうがより良いと思われるのである。
どうしてそういう声が少ないかというと、そもそもUS配列を使っている人がJIS配列のユーザに比べて圧倒的に少ないと考えられるのと、キーボードに拘る人の多くがコーディング作業などを中心としている人である可能性があることではないか。JIS配列のシェアが高く、US配列を試したり切り替えたりする判断ができないということもある。
US配列の特徴を理解して思い切ってUS配列キーボードにして和文入力を少しやってみると、こっちのほうが自分には合っていると思う人の割合は確実に増える。
US配列の最大の欠点は我が国では普及していないということであるが、RealforceもHHKBも、あるいはFILCOなどのメカニカルキーボードでもUS配列は選択できるし、ノートPCでもUS配列が選べるものもあるので、シェアが少ないからと言って選べないわけではない。
確定アンドゥー異変
ATOKには、確定アンドゥという機能がある。変換して確定してしまった直後に、それを未確定状態に戻せる機能で、Ctrl+BSキーに割り当てられている。自分は誤変換して確定してしまった時、変換のやり直しのために多用する。
似ている機能で再変換があるが、これは既に確定してしまっている文節を未確定状態に戻す機能で、確定直後でない場合に使用する。
その確定アンドゥが、最近、ATOK Passportにした後くらいから違和感というか異変というか、そういう状態が生じている。これまでと使い方は変わっていないはずなのに、Ctrl+BSの操作で、次のようなツールチップが表示されるのである。
「△指定された範囲に読みに戻せないデータが含まれています。」
「△カーソル位置に読みに戻せるデータがありません。」
メッセージを鵜呑みにすると、前者はおかしな確定状態となっているか、かなり特殊な変換をしてしまったように思われるが、普通の文字列以上のものはない。
そればかりか、最後の文節がこのメッセージと共に消失してしまって、再度入力を余儀なくされることもある。
今まで、対応していないアプリケーションでは、この操作をすると未確定状態の文字が確定された上に再度未確定状態の文字列が表示されるという、これもまたおかしな現象が生じていたが、今回のこれは対応しているアプリケーション上でも発生している。
普段WZ EDITORを使っていて出るので、秀丸でもやってみたら同様に出現する。
今まで、こんなことはなかった。何らか仕様が変わっているのだと思われるが、きちんと意図通りに動作しないのは困ることである。
しかしこの確定アンドゥ機能はおそらくあまり知られていないし、使われてもいない。
Google日本語入力では、「確定取り消し」として、MS-IMEでも「確定取消」として同じ機能があるが、アンドゥできるのは最後の文節だけで、さらにその前に確定した文節を未確定状態にする機能はない。ATOKではATOK2008以降でCtrl+BSキーをさらに操作することでそれができる。
特に、再変換機能と混同されている可能性もある。きちんと使い分けて使いこなすことが出来れば、これはかなり高度というか、入力・変換作業が効率的になるはずなのだが、IMEの黎明期から備わっている基本的な機能ではなく後付け機能であるために、中々知名度も上がらず、基本的な操作としても認知されていない。
キーボードとATOK
PCには様々なキーボードがあって、歴史の古いATOKも様々なキーボードで使われてきた経過があるので、その互換性とか、対応の違いについては一応ちゃんと整理されている。
ヘルプを辿れば、キー対応表というのがあって、US配列の101キーボードやIBMのキーボード、PC-98のキーボード、初期の東芝Dynabookキーボードなどでの対応もきちんと説明されている。NECの文豪もある。
US配列は、101英語キーボードというのがそれに相当するので、そこで対応するキー操作を調べて、対応がされていない機能は自分で任意のキーに割当をすることで問題ない。
自分もそういう方法を使って、US配列でATOKを使うために最適と思う割当をしている。
https://aourkbd.net/hasei/atokascii.html
US配列でATOK
何度も似たようなことを書いていると思うが、このような割当をすることでUS配列でATOKが快適に使えるのである。
多くの人は、そういう手間を掛けるのも惜しむので、それがまたUS配列など国内で標準でない配列のキーボードの普及を妨げている。