縦書きの環境

投稿者: | 2020-05-02

和文は縦書きが基本である。今はもう公用文でさえも横書きが当たり前になり、新聞や書籍、あるいは文芸作品の分野が縦書きが使われる中心となっているが、パソコンで作成する電子的な文章書きにも縦書き表示と縦書きで入力できる環境は必要である。
横書きが主流になってから時間が経っているのと、PCは基本的に横書き向けに作られているので、PCにおける縦書きは後発の技術である。
縦書き表示、縦書き編集のニーズは以前から根強くあった。ワープロ専用機でも縦書きでの印刷イメージ表示、縦書き印刷の機能はあったが、縦書き編集機能の実現は難しかったようで、それができるようになった機種があったとしても、最後期のものなのではないかと思うが、よく知らない。

縦書き編集とは、縦書き表示のままで文字入力や行送りなどが横書き同様にきちんとできるということであるが、入力していく文字を縦方向にするだけというものでも、技術的には相当困難なことであったらしい。
ワープロソフトにおいては、おそらく専用機よりも先にそのような縦書き編集ができるようになっていた。具体的に何時頃、何のソフトウエアが最初だったかという明確な情報は探せないが、生成AIの回答によれば1987年に一太郎Ver.3が最初だったということである。その後、Wordも1995年のVer.7からこれに対応したとのことである。
小説などの文芸作品を創作する人や、新聞など縦書き記事を書く人にとっては、イメージ通りの原稿を作ることが出来るようになるので大いに歓迎されたと思う。
ただ、ワープロソフトでは文字数は用紙に合わせて最初から何字何行と設定するので、これが当時のPCのモニターの解像度では収まりが悪く、行末にカーソルが行く度にスクロールが発生したりと、使いづらい面もあったように思う。これは今でもさほど変わっていない。これがテキストエディタであれば、自由度が高いので、そういう表示の面での不満も解消することはできる。

テキストエディタにおいては、当初対応しているものはほとんど無かった。テキストエディタがコーディングのためだけではなく文章執筆ツールとして用いられるようになってきてから、そういうニーズに呼応して縦書き機能が加わるようになった。
WZ EDITORは古くから(確かVer.2から)縦書きに対応した。秀丸は、当初はその予定はなかったらしいが、Ver.5から縦書きに対応した。他にもakiraというエディタ、Boon Editorなども縦書き対応していたし、QXエディタも文章書きに寄った縦書き対応エディタとして有名になった。
最近では、小説などの縦書き文章書きに特化したような縦書きを基本としたエディタもある。O’s Editor、TATE EditorやVertical Editorなどがそれである。

自分が必要としているのはコーディングやその他、一般的な横書き環境でのテキスト・文章書きを基本としながらも、完全な縦書き環境も備えているエディタである。WZと秀丸がそれに該当し、この二つのエディタはきちんとした縦書き環境を備えている。比較的シンプルなエディタとしては、Meryが縦書き対応している。
だが他の有名な老舗エディタ、市販エディタ製品でもEm EditorやMIFESなどは今も縦書きには対応していない。フリーで高機能のサクラエディタも縦書きはできない。TeraPadも非対応である。
UNIX系らしいEmacs、Vim、xyzzyなども縦書きは出来ないし、AtomやSublime Textなどの新興エディタも、その他多くのエディタも対応していない。Mac環境のエディタはよく知らないが、縦書き対応が出来ている物はあるようだ。

縦書き対応のエディタでは、原稿用紙を模した設定もできるものもあり、正に縦書きの環境が実現できる。テキストエディタの通常使っている高度な編集機能はそのままに、それが縦書き環境でも実装されているのである。
自分の場合は、実際に入稿したりするようなことはないので、原稿用紙の縦書き環境はただ縦書きの気分を味わうもの程度であるが、それでもやはり縦書きで書くと正に和文を書いているという気持ちになる。原稿用紙に拘るなら、1行の文字数は20字にして400字詰めにすることが良いのかも知れないが、20字だと少なすぎて長文原稿では全体が見渡しにくい。1行は35字程度になるよう調整するのが丁度良いと感じている。

IMEの変換ウィンドウも縦書きになるかどうかなどはエディタとIMEの対応次第である。例えばATOKの場合、秀丸やMeryでは変換候補ウィンドウも縦書きになるが、WZではならない。Google日本語入力などではそもそも縦書き候補ウィンドウの機能がない。
縦書きに伴うカーソルの動きも、縦横変換して考えなければならなかったりするが、こちらは感覚的なことでもあって、特に迷いが生じることもない。マウスホイールはどっちに動かせば後方にスクロールなのか前方なのかで少し迷う。
WZでは横書きと縦書きの表示切り替えも容易いが、秀丸の場合は設定と関連しているので拡張子を変えなければならない。自分の場合は、縦書き表示用テキストの拡張子を「.txv」としているので、縦書きをする時はファイル名を変更して表示を切り替えるのである。

この記事の元原稿は画像のとおり、WZで縦書きで書いてみた。2020年の記事を2024-01-21に少し編集して加筆したりした。