昔はパソコンなどで縦書きができる環境は限られていたが、今は日本語が扱えるワープロならできて当たり前。テキストエディタも日本語の文章書きに注力されているものなら縦書きができるのが普通だ。そういう縦書き入力の選択肢が増えた今、どういう環境を選ぶのがベストなのか。
縦書きでテキストを入力する環境は、ワープロよりテキストエディタのほうが良いと思っている。
ワープロだと、通常の書式の設定では一行の字数の関係で入力時に縦方向のスクロールが生じて書く作業がやりにくい。一行の字数を少なく調整するとそういうことは起こらないが、ワープロでは基本的に用紙のイメージを意識して作業を行うものなので、入力のために字数を調整すると、後でまた印刷用に字数を調整しなければならない。縦書き入力専用のフォーマットを作るというのなら良いかもしれないが、入力用に適した環境と印刷に適した環境が違うために、その両方を満たす設定をすることがワープロでは難しい。
一太郎などは、かなり前から縦書き入力に対応していたワープロソフトで、今ではワープロソフトの中での縦書き対応度は一番だと思うが、ワープロである以上は用紙の概念がベースにあるので、結局そういう呪縛からは解放されない。それでもエディタフェーズでは縦書きに対応しているから縦方向スクロールを回避することは可能であるものの、ドラフト編集画面は縦書きにできないというのは残念である。
テキストエディタでも字数を多くすると縦スクロールが生じたりする事情は同じだが、画面サイズに合わせて下端側で折り返すようにすることができるなど、表示調整の自由度が高いので、入力しやすい環境を作ることができる。見やすい文字サイズへの調整も容易だし、行間の調整も難しくない。つまり、テキストエディタは入力環境だけ考えていれば良いため、縦書き入力に適した環境が作りやすい。入力する作業に関してはエディタを使ったほうが快適だと思うのである。
ところで、普段横書きに慣れていると、入力した文字が縦方向に進んでいくのは違和感があるし、カーソルキーを使う場合、横感覚でそのまま使えるか縦横変換されているかはそれぞれの環境により違うので、そこも注意しなければならない
縦書き入力では、IMEの対応度も関係がある。たとえばATOKは縦書きの場合きちんと返還候補も縦表示になるので自然だが、Google日本語入力は変換候補の表示は横書きしかできない。
かつて、縦書き対応が不十分なワープロで、縦書きの表示はできるがIMEでの入力(確定前の入力)は横書きしかできないという中途半端な物もあった。カーソル位置にテキストを横書き状態で入力して、確定操作をすると縦方向に文字列が並べられるという具合である。結果的に縦書き対応はしていると言えるが、入力環境がそれでは不十分である。
縦書き入力の環境を作るには、おそらくそういう問題を一つずつ解決してこなければならないため、今のような対応環境に至るまでにはずいぶんと時間もかかった。
Windowsも8になって、縦書き時の「…」記号が満足に表示されないことがあったり、Wordでも縦書き時の不具合があったりと、やはり米国由来のものはそういう点で信頼ができない部分があるものである。