ピンセッター・ウォッチング

投稿者: | 2016-05-05

ここ数日、YouTubeでボウリングのピンセッターなどの動画をだいぶ見ているので、ピンセッターの種類により様々な特徴があるということがわかってきた。ピンのセッティングの手順とか、ピンをマシンに配送してセットする流れは表側からはほとんど見えないが、裏側では様々な工夫があるようなのだ。
自分がこれまで行ったことのあるセンターは、Brunswickのマシンを使っているところが多く、それらは皆「A-2」のマシンであった。
A-2のマシンは、米国で50年以上前にリリースされ、日本でも昭和40年代以降に建設されたセンターの多くで今も現役で使われている。おそらく、日本で最もポピュラーなピンセッターマシンであると思う。ピンをセットする時に上から下りてくるセッティングテーブルのユニット前面に「A-2」というマシン名が大きく書かれたプレートが取り付けられているので、それが特徴的である。
このマシンは、セッティングユニットの上部にターレットと呼ばれるピンの供給籠があり、そこにピンエレベータで持ち上げられて運ばれてきたピンが蓄積される。ピストルのリボルバーのように回転しながら、1本ずつ順に9本を蓄えて一旦停止する。ターレットの下のセッティングユニット(この辺、正式な名称ではないが)が、2投目のボールが通過してデッキ上をスイーパーが払うか、1投目がストライクでデッキにピンがない状態になると、10本目のピン(5番ピン)がターレットに供給されると同時に、籠の底が開いてその10本がユニットに滑り落ち、ピンデッキへのセット待ち状態となる。セット待ち状態は、ユニット内で既にピンが立てられた状態になるが、このユニットがデッキ面近くまで下降してデッキにピンを置くようにセットする。
レーン側からは、「A-2」のプレートのカバーがあるので、内部を見ることは出来ない。
Brunswickとシェアを二分するメーカーとしてAMFがあるが、自分としてはあまりAMFを使っているセンターを訪れる機会は少ない。
AMFは、Brunswickよりも先に、1946年に世界初の自動ピンセッターを開発したところである。なお、AMFのマシンはピンセッターではなくピンスポッターと言うらしい。
1950年代から量産されるようになった82-30というマシンは、おそらく日本ではほとんど使われていないかもしれないが、米国などのセンターではまだ稼働しているようで、動画でも見ることが出来る。
AMFのピンセッターは、ピンエレベータで持ち上げられたピンを、ディストリビュータと呼ばれるベルトコンベア装置が前後左右に移動しながら1~10番の各位置にピンを供給していくのが基本だ。これは今の最新機種でも変わらない。
82-30は、セッティングユニットに直接ピンを供給する。供給されたピンは、ユニット内に下方45度ほどの角度で斜めになった状態で、スポッティングカップと呼ばれるパーツにストックされてセット待ちの状態になる。ピンのセットは、この斜め状態のピンが立てられながらユニットが下降し、スポッティングカップが掌のように動作してピンをデッキにセットする。
このマシンでは10本のピンの供給は常に行われ、ユニットが1投目の処理でピンをリフトアップしながら下のデッキがスイープされるのを待って下ろす動作を行うために下降上昇している間も構わずにセットされる。その意味では、ディストリビュータは前後左右方向に加えて上下方向にも移動しながらピンを供給している。ピンエレベータとディストリビュータの間にカウンタのスイッチがあり、多分これで検知して10本供給したところで一旦停止するようになっているのだと思う。
AMFのピンセッターは、前面にカバーが無いため、レーン側からもこの供給されて斜め状態でストックされているセット待ちのピンが見えてしまっている。時には、ユニットが下降している状態の最中にピンが供給されて、ストンと上から下りてきてストックされるところの様子がそのまま見えてしまう。動画で見る限り、面白い動作であると感じるが、1投目が終わって残ピンをリフトアップするのにセット待ちのピンも一緒に見えるので、あまり美しくはない。
1960年代に、その次のモデルとして開発され量産され、今も使い続けられているのが82-70というマシンである。おそらく、国内の1980年代以前に作られたAMF採用のセンターでは今もこのマシンを使用していると思われる。
このマシンは、セッティングテーブルの上部にピンを寝かせた状態でストックする供給トレイ(最新のシステムではデュラビンと呼ばれるもの)が存在する。
ディストリビュータは82-30と同様に前後左右に動いて、この供給トレイにピンを配送していく。トレイではピンは寝かせられた状態でストックされ、10本が供給された後もさらにもう1本ずつこのトレイにストックすることができるようだ。
このトレイの真下にあるセッティングテーブルのユニットが空になり、かつトレイに10本が供給されていると、トレイの下部の底が開いてユニット上のスポッティングカップに寝かせた状態でセットされる。
82-30との動作上の大きな違いは、供給トレイを介することでセッティングユニットにはピンをセットする直前にピンのセットが行われることと、ピンが寝かせられた状態でセットされるというところである。
ピンデッキにピンをセットする時は、この寝かせられた状態のピンを起こしながら、スポッティングカップが掌のように動いてピンを立たせる。
この動作は、レーン側からも見ることができる。ユニットにピンがセットされるのはデッキにセットする直前のタイミングなので、82-30のように待ち状態のピンが別の動作時に見えることはない。このマシンは、デッキにピンをセットする所作は、前面にカバーが無い分はっきりと見えるというのが特徴である。セッティングユニットのフレームはシルバーで、そのフレームと共にピンが起こされてセットされる姿は美しいと思う。
AMFはその後、1980年代から90年頃にかけて、この82-70を近代化した82-90を開発した。これはコンピュータによる制御を前提とした構造のマシンにしたもので、部品の見直しなどを行っているはずだが、基本的な機構については82-70とほとんど変わらないように見える。多分、レーン側から見分けはつかず、古そうなマシンなら70で新しいなら90系のシリーズとみるべきか。
一方のBrunswickも、1990年頃から最新のGSシリーズを開発し、今の最新は2000年頃から導入され始めたGS-Xである。
これは、それ以前のA-2とは大きく異なり、ターレットが廃止され、AMF 82-70以降のような供給トレイのシステムになったことである。この供給トレイには、ピンは寝かせられた状態でセットされるが、AMFのトレイとの違いは、1セット分10本しか蓄積することができない。AMFのトレイには1セットを超えて、1カ所に2本目のピンを蓄積することができる。
GS系のマシンのトレイには、ディストリビュータにより配送されるが、AMFと違い、トレイ上を往復方向に左右で2系統6本のベルトコンベアが走り、そこの上をピンが送られて自動的にセットされるようになっている。10本を超えたピンは、ベルトコンベアのラインを経由してピンエレベータの側へ一旦戻されるようになっている。
トレイに寝かされた状態でセットされたピンは、デッキへのセットが必要になった状態でユニット側に落とされて、スポッティングカップの様なパーツで立たせられながらデッキへセットされる。つまり、AMFの82-70以降のシステムに非常によく似た動作をする。
ただし、82-70では寝かせられたピンを下方へぶら下げるような方向で立たせるのに対し、GS系では、ピンの下部を支点にして、下から起こすような方向で立たせるという違いがある。これは、前面側から見るとほとんどわからないかもしれない。
こういう動作は、YouTubeではそれぞれのピンセッター名などで検索して見るのも良いが、センター名とか大会名などで検索してそれぞれのマシンの動作を見てみるのも楽しめる。