一太郎とWord

投稿者: | 2020-02-09

一太郎とWordという比較は検索したら山ほど出てくると思うので、ここはあくまで自分の視点での比較である。要は、何故一太郎を選ぶかということである。
自分はパソコンを使い始めたときに、ワープロ専用機から乗り換えたワープロソフトが一太郎だった。これは付属のATOKが優秀と聞いていたこともあるし、他にWordの選択肢もあったが、その時点ではワープロソフトの標準は一太郎だったからである。
だがすぐに比較のためにWordも使い始めた。偉く、文書の書式設定の方法がわかりにくいのと、ワープロ専用機や一太郎との感覚の違い、段落の概念などがよくわからず、一太郎より動作は軽く快適であったのだが、あまり使わずにいた。
そのうちWindows 95になって、一太郎7が急に使いづらくなったり、仕事での標準のワープロがWordになったりしたことで、この辺りで一太郎からWordに乗り換えた。単純な文章入力だけならテキストエディタを使った。
それからしばらくはWord一辺倒でやってきて、一太郎形式の資産をWord形式に移し替えるようなことも積極的にやったりもしていた。自宅PCではMS-Officeは入れずにLibreOfficeのWriterなどで間に合わせてきたが、またあるときちゃんとしたOfficeソフトを入れておこうと思って比較した際に、日本語文書作成に最適な機能を売りにしている一太郎に再び戻った。
一太郎は、かつての動作の緩慢さも使いづらさも消え、日本語文書の作成のためにあったら良いと思われる機能が豊富に備えられていた。既に標準となっているWordファイルやWordの感覚との互換性もある程度確保されていて、乗り換えたりするのに何も困ったことはなかった。
以来、今度は逆にWord資産を一太郎化したりして、一太郎に傾倒するようになっている。
その時に一太郎を選んだのは、まず第一に、国産アプリケーションであることである。海外産のWordより日本語文書作成に適している、縦書きでも何でも日本語文書を書くためによく考えられているのはWord以上であることには間違いなく、各種のそういう支援機能が充実している。英文も扱うならともかく、日本語の文書を書くためのアプリケーションとして、なぜ国産品を選ばないのか疑問である。
実際、Wordにも同等の機能はあると思うのだが、使い方の感覚が馴染みにくかったり、そこに至るまでが難しかったりする。Wordを選ぶのはもはや当たり前になっていると、一太郎との比較で機能が紹介されることもなく、Wordはどこが売りなのかわからなかったし、何より価格も一太郎より高い。
一太郎は、ATOKが付属するほか、プレミアム以上のエディションではフォントや電子辞書、図形作成の花子やPDF作成、メールソフト、MS-Officeとも互換性がある表計算やプレゼンテーションソフトなども添付されていて、それでいて同等機能をMS-Officeで揃えるよりもずっと安い。これはかなり得である。
そうして改めて一太郎を使い始めてみると、やはりWordより優れた点が多くあった。順を考えずに言うが、たとえばエディタフェーズからアウトライン、基本編集、ビューアなどの文書作成段階に分けて必要な機能が備えられている。Wordにはそういう考え方がない。基本編集もかつての一太郎の標準だったドラフト編集モードがあり、テキストエディタのように背景色や文字色のカスタマイズもできるなど、エディタフェーズと共にテキストエディタを模して文章書きがしやすい体系になっている。こういう機能はWordにはない。
昔ながらのESCメニューも使いやすい。ショートカットキーの機能であるが、頻出のコマンドをキー操作で全てできるというのは便利で、Wordには同等の機能はない。何十年も前の使い勝手が今も踏襲されている。古いユーザを切り捨てない考えで、古い時代にも使っていた自分が再び使い始めても問題がない。Wordではこうはならない。昔のWordと今のWordでは随分仕様が違っている。
ファイル形式のサポートも、一太郎は初期の一太郎のファイルでさえ扱うことができる。Wordもできるのか知らないが、一太郎の場合はそういう初期形式と今の形式の互換性に関する情報も詳しく提供していて、古い資産も大事に使えるようになっている。
一太郎ではWord形式も読み込めたりWord形式で保存できたりするが、Wordからは一太郎形式は全く無視されている。嫌な傲りぶりである。
あまり使わないが、マクロも一太郎は独自の言語であるが、以前にも作成したことがありWordのVBよりずっとわかりやすい。WordのVBマクロはExcelとも共通するのかもしれないが、プログラミングの知識がある程度ないと作成することができない。
一太郎でもそういう知識は必要であるが、実際自分でも少しできるくらいなのだから、ハードルは高くない。ヘルプも充実している。
ヘルプの充実、わかりやすいということで言えば、マクロ以外の通常の機能のヘルプが充実しているのも一太郎のほうである。書籍のマニュアルは公式のものくらいしか選択肢がないが、オンラインのヘルプについてはきちんと全て記述してあってわかりやすい。Wordの場合は、ヘルプはネット接続がなければ使えないし、それで得られる内容も単純なことばかりでリファレンス的なものがなく、目的のことを調べられない。Wordをもっと詳しく知りたければWebで検索するか周りの誰かに訊かなければならないのである。
Excelにはシートの考え方があって、一つのファイル内に複数のシートを作成できる。これと同じように一太郎にもシートの考え方があって、一つのファイル内に複数の異なった書式の文書を含めることが出来る。図形の花子やExcel形式、PowerPoint形式の文書もシートとして含めることができて、一太郎のファイルは正にブック感覚でもある。
Wordでは、なぜかシートの考えがなく、複数の文書を一つのファイルにまとめることができないのである。
細かい部分では、一太郎でファイル名を自動的に付けることができるのも便利である。日付や時刻をファイル名に自動的につけることができる。Wordではそもそもそういう機能はない。
国内で使われている用紙や使われている様式に合うようなテンプレートも多く、簡単に目的の文書書式の設定もできるようになっている。Wordにもテンプレートはあるが、海外標準的なものになっていて、新鮮味はあるが昭和由来の日本人の感覚からズレている。
一太郎は花子と共にイラストや図形の素材も豊富で、しかも人物がちゃんと日本人になっているなど、感覚的に使いやすい。Wordでは、今はもうオンラインになってインターネットが使える状態でなければイラスト素材が入手できないし、それも著作権的にどこでも使える物なのかわからなくなったし、日本人の感覚とはずいぶん異なった雰囲気の人物や建物などのイラストばかりである。季節行事も日本とは違っているし、干支などの和の文化の考えは入っていない。
ただ、一般に言われる罫線については、一太郎の方が使いやすいなどとも言われるのだが、Wordの罫線を知ってしまうと、Wordのほうが自由が利くような気もして、自分は特に一太郎が優勢とも言い切れない。表内での書式設定に関してはWordのほうが自由度が高いと思うが、これは罫線と表とを混同してしまっているかもしれない。
図形の作成の感覚も、Wordのほうが自由度が高く作りやすいが、配置の調整が困難で、周りのテキストが行方不明になったりすることがしばしばある。
Excelとの連携もWordのほうが有利なのだろうが、文書内に表を貼り付けたりすることに関しては一太郎も同等機能があって優劣付けがたい。
ATOKのことを除いても、これだけの利点があって、日本語・和文の文書作成のために最適なアプリケーションは一太郎を置いて他に無い。
文章書き自体はテキストエディタですることが多いとしても、整形して紙の文書やPDFを作成する時にはワープロソフトは必須であって、その際の選択肢としては自分としては当面一太郎しかないのである。