テキストエディタ数題

投稿者: | 2022-02-04
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エディタに関して今週以前に書きためていた物、数題。まだ書くかも知れないが、溜まったので。

エディタを知った頃

テキストエディタというものを初めて知ったのは、まだPCを使うようになる前だった。ワープロソフトよりもエディタというものを使ったほうが、文章書き作業では高度なことができるのだという。
テキストエディタとはどういうソフトウエアなのか。「文字を編集するソフト」というくらいしか説明がない。文字を編集する、編集とは一体どういうことなのか、まずそれがわからないのである。今にして思えばこれが、文章を編集する、ならまだ意味がわかったのであるが、当時の説明はだいたい一貫して文字を編集する、とだけあるのだ。

調べていくうちに、どうやら「テキストファイル」という「文字だけ」の形式のデータファイルがあるらしいと知る。文字だけ、というのは正に文字だけなら、空白文字や改行コードなどの制御が効くような内容なのか、ワープロのデータから変換して、きちんと文章として引き継げるのかなど、それも実際よくわからなかった。ワープロ専用機からPCに乗り換える直前には、MS-DOSテキスト変換ユーティリティなるもので、作成した文書を変換したが、それもちゃんと改行入りで引き継げる物なのかも不安だった。

PCを使うようになって、Windowsのメモ帳がそのテキストエディタだと聞いたので、それでファイルを開いてみれば、本当に文字しか表示されない。改行コードは変換されているようで、なんとか引き継ぐことは出来るということがわかったし、テキストファイルは汎用的なデータ形式ファイルで、それをワープロソフトで読み込んで再編集したら、PCでも使える文書データになるということもわかった。

それにしても、メモ帳の機能は単純である。ただ本当に文字を書くだけ、もちろん検索くらいはできるが、ワープロソフトの一太郎と比較してもどこが編集に優れているソフトなのか全く理解できない。テキストエディタとは名ばかりなのか、あるいはDOSの環境では何がすごい仕組みがあったのかと、最初のうちはさっぱりわからない。

やがてオンラインソフトの存在を知り、まだその頃は自分の環境にはインターネットもパソコン通信もなかったので、雑誌の付録にあった秀丸エディタを試用してみて、メモ帳との機能差が歴然としていることを知る。編集機能に優れたとはまさにこういうエディタのことをいうのだと、テキストエディタとはこういうものだということを、そのときになってようやく知ったのである。
思えば、学生の頃研究室でパソコンのデモ操作を色々見せてもらったときに、テキスト文献の編集にはこういうものをつかってやることができて、CtrlキーとESDXのキーの組み合わせでホームポジションからでもカーソル操作ができるのだという説明を受けたのも思い出した。思えばあれは、VZ EditorあるいはMIFESだったかもしれないのである。

そうやってテキストエディタと出会った自分は、様々なオンラインソフトのエディタを試し、市販ソフトならもっと凄いエディタがあるのだろうと、電気店のパソコンソフトのコーナーで見つけたのが発売になったばかりのWZ EDITORであったのである。1995年の11月頃だったと思う。
もちろんそれ以後も、他の市販のエディタだとか、様々なフリーソフト・シェアウエアの試用をしたりしたが、結局使うようになるのはWZで、WZは以来ほとんどずっと、使い続けることになるのである。

古いエディタ

ワープロの一太郎同様に、秀丸もWZもその名を出すとまだあったのか、まだ使っている人が居るのかと驚かれることが少なくない。どれも全て健在なのだがもう最近のユーザからすると前時代のものと思われている。
じゃあ最新は何なのかと問えば、ワープロならWordで、エディタならAtomだとか、そういうものになるのか。とりわけ、エディタは無償のものばかりが取り沙汰される。

コーディングのためのテキストエディタという場合は、そういう海外産のものが主流になってもおかしくはないが、それに加えて和文の文章を扱う場合、Wordも同様だが海外産のアプリケーションは文化に適合していない。それが新しいと考えるか、旧来からの文化を大切にする精神があるかないか、そういうところで判断が分かれる。

文章を書くツールとして見た場合、和文の文化をきちんと押さえてそれに対応しているものは少ない。指標の一つとしては縦書きの対応度がどのくらいかというのもある。ワープロはWordもLibreOfficeも、もちろん縦書きに対応しているものの、なんとなく間に合わせというイメージが拭えない。テキストエディタで縦書き対応している物は、今は少ない。文章書き専用のエディタなら対応していて当たり前だが、それ以外の汎用のテキストエディタとしては、秀丸とWZ、フリーではMeryくらいしかすぐには思い当たらない。
市販品でもMIFESやEmEditorなどは依然として縦書きには対応していないはずだ。もちろん文章書きに向かないわけではないが、和文にきちんと構えるなら縦書きは必須と言える。

縦書き対応のエディタ

テキストエディタに縦書きなんて必要ないと思う向きがある。コーディング用途に限って言えばその通りで、コーディングにしか使わない場合のエディタには縦書きは不要であるが、その場合そのエディタはコーディング用途にしか使えない。

PCで縦書きを扱えるようになるというのは、それは横書き文化の中で発達してきたPCの仕様にとっては型破りの技術である。先人達は苦労してその技術を現在のPCに組み込んだ。まだDOSの時代はほとんど縦書きに対応した環境というのはなかったはずで、Windowsの頃になって次第にワープロやエディタが対応してきた。

和文の文章を扱うなら、縦書きの必要性は大きい。そもそも、和文は縦書きが基本である。
小説などの文学作品、書籍の原稿、新聞の記事、手紙文の類など、横書き標準になった今でもまだまだ縦書きでなければならない分野はたくさんある。法律の条文や法務の分野などでも縦書きは必要である。プロだとかアマチュアだとか、あるいは趣味で書く程度だとかにも関係なく、そういう文章を扱う場合は基本的に縦書きでなくてはならない。

完成品が縦書きであるものを横書きで書かなければならないのはストレスである。結果がついてこない。特に原稿の場合は、結果と合わせて一行の文字数を意識して書かないと、約物のバランスなどがおかしくなって、できあがった結果が汚いものになる。
結果が縦書きになるものは、書く段階から縦書きにしなければならない。
すなわち文章をテキストエディタで書くなら、テキストエディタも縦書きに対応している必要はあると言える。

ところが前述のとおり、縦書きに対応したテキストエディタはそう多くない。ワープロでは一応対応しているが、文章書き環境のためのエディタでは少ない。おそらくこれは、和文の文章を書くための、原稿書きのための用途として考えられていないからである。エディタはコーディングのためだけのものと捉えられているからである。
縦書きにきちんと対応しているエディタは、和文の文章書きのことをちゃんと真摯に考えているアプリケーションなのだと思って間違いない。