雑考4月その2

投稿者: | 2023-04-29

中々ほかのことをやっていてブログ記事を書いていないが、この辺で1つ新記事として投稿しておくことにするのである。

ヘッドホン2機種

SONY WH-1000XM5とBOSE Quiet Comfort 45、何れもノイズキャンセリングを備えた有名なヘッドホンである。スピーカを使わない場合のPCでの音響環境を整えようと、2台別の場所で使っているPCのことを考えて、この二つを選んだ。

どちらも、BluetoothでWindows PCに接続できる。有線でその他の機器へも接続できるようになっているので、基本的にどんな機器でも使える。持ち運びや保管のためのケースが付属しているほか、ノイズキャンセリングやヘッドセットとしての機能など様々な共通点もあり、クラス分け的には同じものと言える。

ただし、折りたたんで収納できるか否かなどの違いもある。
折りたためる、コンパクトに収納できるというのはやはり必要なことである。ハイエンド、フラッグシップ機ではこれができないものが少なくない。折りたたみの機構にコストを掛けないということも重要だが、まだこのクラスのヘッドホンなら持ち運んで使うことが想定されるので、取り回しが良いというのも利点になる。

おそらくはSONYの機種のほうが、今は少し高価であるものの、ブランドの知名度が高いことやマーケティングを積極的に行っていること、基本性能の他にも機能性の高さなどで、それなりに高価と思うが非常に人気が高い機種であるようだ。
電源のオンオフ以外、タッチ操作で基本的なことができたり、外音取り込みのモードに切り替えやすかったりできるスマートさもあり、デザイン性も良好である。

一方のBOSEは音響機器メーカーとして名高いので、一般の人よりはそういう製品を好む人などに人気があると思われる。日本の家電ではなく海外製品らしく、機能は多くないが、基本機能で不足はなく、そもそもWindows接続ではアプリが使えないので、その点における不利な点はない。

装着感はどちらも柔らかい感じで、締め付けられるような感覚は少ない。だが耳を覆って無駄な音は漏らさず、あるいは取り込みされず、結果として繊細な音を聞き取りやすいようになっている。
BOSEの製品は低音が特徴的と言われているが、この二つを比較するとSONYの方が低音が強い迫力のある音質の仕上がりになっている。普通の人は、そういう音質を好む傾向もあるのかもしれないので、より多くの人が良い音と感じるような好みに沿っているのかもしれない。
BOSEのほうは、全ての音域に亘って鮮明さが際立ち、中域のボーカルなども聞きやすく、癖がなくもっと感じが良い。価格はSONYのほうが上なので、質もSONYが上なのかと思っていたが、好みで言えばBOSEのほうが良い。これは多分、普段PCの音を聴いているスピーカがBOSEであることにも少なからず関係しているのだと思う。

PCの音は、依然としてスピーカで聴くのが基本ではあると思っているが、より繊細に楽しんだり、音漏れをしないようにしたりする場合、周囲のノイズを気にせず集中したい場合などには、このようなノイズキャンセリングのヘッドホンが良い。
ノイズキャンセリングでは他にイヤホンの分野もあるが、それとはまた一歩違っている。

Pinsetters & PinSpotters

7年ほど前に書いた文章をリニューアルしてみることにした。これを元原稿にして、いずれサイトの側へもこのテキストを整理するつもりである。

ボウリングの設備は、割と古い時代から多くの部分がオートメーション化されていたところが他の娯楽やスポーツとの違いでもあり、自分が子供の頃に見た、まるでロボットのような機械の動きがとにかく、ある意味不気味で、それが興味をそそるものであった。
ピンを自動的にセットする機械。カバーで覆われた裏側は実際どうなっているのか、ずっと疑問に思っていた。
随分前に一度バックヤード側に入らせてもらって見たことがあるが、その時点では知識もさほどなく、仕組みはよくわからず、大きな動作音だけが印象に残っている。

ボウリングのピンをセットする機械は単に「マシン」と言われることもある。ピンセッター又はピンスポッターと呼ばれ、レーンのピンデッキの上部に備わっている。
そういう裏側のマシンの動きは、今ではYouTubeに動画がたくさんあるので、それで仕組をだいぶ知ることができた。
以下、ここではピンセッターとピンスポッターのことを総称してピンセッターと呼ぶことにする。

ピンセッターの基本の動き

そもそも、ピンセッターの基本的な動きはこうだ。

  1. 1投目が投球されてボールがピンデッキ手前のセンサーを通過すると検知してスイッチが入り、スイーパーと呼ばれる遮断板・遮断棒が下降してレーンを塞ぐ。
  2. 上からピンを配置するピンセッターの本体機構部分が下りてきて倒れなかった残ピンを掴み上げる。
  3. スイーパーが後方にスライドしてデッキに残ったままのピンを払って後方のピットに落とす。
  4. 残ピンを掴み上げた機構部分が下りて、残ピンを元の位置に戻す。
  5. スイーパーが上昇して2投目を待つ。
  6. 2投目のボール通過が検知されると、再びスイーパーが下降してくる。
  7. 2投目残ピンの有無に関わらず、そのままスイーパーが後方にスライドして全てのピンを払い除ける。
  8. 機構部分が下降して、新たな10本のピンをデッキに立て、機構部分は上昇する。
  9. スイーパーが上昇し、次のフレームの投球を待つ。

スイーパーは、投球後にすぐ遮断機のように下りてきて、ピンを払い除ける特徴的な動きをするパーツである。センター名やピンセッターのメーカー名などが表示されていたりする。
また、機構部分が検知する残ピンの状況は、カバーに取り付けられていたり組み込まれていたりするマスキングユニットに「×」などのストライクマークを点灯させたり、残ピン位置を表示したりする。あるいは、1投目の動作であるか2投目の動作であるかもランプで表示したりもする。

ピンが落とされるピットでは、ボールとピンが大きさで仕分けられ、ボールはゴムベルトでガイドレールに沿って持ち上げられレーン間の通路を転がせられてアプローチ上のリターンユニット側へ戻される。
ピンはピンエレベータという仕組みで機械の上部に持ち上げられ、上方向からピンセッターにセットされるというわけである。

2大メーカー製機器の違い

このピンセッターを作っている企業は、いずれも米国のBrunswick社とAMF社がシェアを持っている。他にボウル・モアーという会社のものも第3社としてある。日本のボウリング場のピンセッターはほとんど、この2社ないし3社のものが輸入されて使われている。

2大メーカーのBrunswickとAMFでは、このピンをセットする機構部分に差がある。
例えばBrunswickのA-2というピンセッターでは、ターレットと呼ばれる回転する籠にリボルバーの弾丸のようなスタイルで、ピンが立った状態で待ち受け状態としてセットされる。その下にピンセッター本体(セッティングテーブル)があり、このターレットから10本が一斉に落とされて本体側に送られ、立てた状態でセットされ、セットされた機構部分が下降して定位置にピンをセットする。
AMFの82-70というピンスポッターでは、ディストリビュータと呼ばれるベルトコンベアが、デュラビンと呼ばれる配給トレイ上を順に移動しながら10本を寝かせた状態で配置する。
その下のピンスポッター本体が空になると、デュラビンの底が開いて落とされ、ピンスポッターに寝かせた状態でセットされる。デッキには、その寝かせた状態のピンを立てながら定位置にセットするのである。

また、Brunswickの最新のマシンでは、ターレットを使用せず複数ラインのディストリビュータ上をピンが流れながらAMFのデュラビンのようなトレイにセットされ、82-70と似た要領でセットする。AMFはデュラビンの1カ所につき2本までストックできる仕組みになっているが、Brunswickの新しいGS-Xというマシンでは、デュラビンにセットできるのは各箇所1本のみで、あふれたピンは並行するディストリビュータ側に流れてピンエレベータ側へ戻り、デュラビンに空きが出るまで巡回している。
スムーズにピンを供給するためには、20本から22本のピンを1台のマシン内でサイクルさせる必要があるらしい。

この二つのメーカーのA-2と82系のピンセッター・ピンスポッターは、レーン側から見ても違いがある。A-2は機構本体にカバーがかけられていて、ピンをセットする様子が見えないが、AMFの82系は、機構のフレーム部分が剥き出しなので寝かされたピンが立てられてセットする様子がよく見えて、こちらのほうがなんだか機械らしくて格好が良いのである。Brunswickのターレットを使用しないタイプのマシンも、82系とセットの仕方が似ているので同様である。

YouTubeで関連動画を見ていると、この2社の代表的機種以外にもタイプはいろいろとあるのがわかる。たとえばピンの上部にストリングがついていて、上から吊してセットするスタイルのものも以前からあるようだが、これはまた根本的に仕組みが異なっている。

Brunswick A-2

自分がこれまで行ったことのあるセンターは、Brunswickのマシンを使っているところが多く、それらは皆「A-2」のマシンであった。
A-2のマシンは、米国で50年以上前にリリースされ、日本でも昭和40年代以降に建設されたセンターの多くで今も現役で使われている。おそらく、日本で最もポピュラーなピンセッターマシンであると思う。ピンをセットする時に上から下りてくるセッティングテーブルのユニット前面に「A-2」というマシン名が大きく書かれたプレートが取り付けられているので、それが特徴的である。

このマシンは、セッティングユニットの上部にターレットと呼ばれるピンの供給籠があり、そこにピンエレベータで持ち上げられて運ばれてきたピンが蓄積される。ピストルのリボルバーのように回転しながら、1本ずつ順に9本を蓄えて一旦停止する。ターレットの下のセッティングユニット(この辺のパーツは正式な名称かどうかは不明だ)が、2投目のボールが通過してデッキ上をスイーパーが払うか、1投目がストライクでデッキにピンがない状態になると、10本目のピン(⑤番ピン)がターレットに供給されると同時に、籠の底が開いてその10本がユニットに滑り落ち、セッター本体にセットされてピンデッキへのセット待ち状態となる。セット待ち状態は、ユニット内で既にピンが立てられた状態になるが、このユニットがデッキ面近くまで下降してデッキにピンを置くようにセットする。
レーン側からは、「A-2」のプレートのカバーがあるので、内部を見ることは出来ない。

AMF 82-30

Brunswickとシェアを二分するAMFだが、日本国内のセンターではおそらく、Brunswick社のマシンを採用しているところのほうが多いように感じる。実際自分としてはあまりAMFを使っているセンターを訪れた機会がBrunswickより少ない。
AMFは、Brunswickよりも先に、1946年に世界初の自動ピンセッターを開発した企業である。また、AMFのマシンはピンセッターではなくピンスポッターと言うらしい。1950年代から量産されるようになった82-30というマシンは、おそらく日本ではほとんど使われていないかもしれないが、米国などのセンターではまだ稼働しているようで、動画でも多く見ることが出来る。
AMFのピンセッターは、ピンエレベータで持ち上げられたピンを、ディストリビュータと呼ばれるベルトコンベア装置が前後左右に移動しながら①~⑩番の各位置にピンを供給していくのが基本だ。これは今の最新機種でも変わらない。
82-30は、セッティングユニットに直接ピンを供給する。供給されたピンは、ユニット内に下方45度ほどの角度で斜めになった状態で、スポッティングカップと呼ばれるパーツにストックされてセット待ちの状態になる。ピンのセットは、この斜め状態のピンが立てられながらユニットが下降し、スポッティングカップが掌のように動作してピンをデッキにセットする。

このマシンでは10本のピンの供給は、セッター本体が上下に動いている最中を含めて常に行われる。セッティングの機構が下降上昇している間も構わずにセットされる。その意味では、ディストリビュータは前後左右方向に加えて上下方向にも移動しながらピンを供給している。ピンエレベータとディストリビュータの間にカウンタのスイッチがあり、多分これで検知して10本供給したところで一旦停止するようになっている。停止している間は円盤状のピンエレベータ内からピンがディストリビュータに流れてくることはなく、エレベータ内を循環している。

AMFのピンセッターは、前面にカバーが無いため、レーン側からもこの供給されて斜め状態でストックされているセット待ちのピンが見えてしまっている。時には、ユニットが下降している状態の最中にピンが供給されて、ストンと上から下りてきてストックされるところの様子がそのまま見えてしまう。動画で見る限り、面白い動作であると感じるが、1投目が終わって残ピンをリフトアップするのにセット待ちのピンも一緒に見えるので、好み的には、あまり美しくはない。

なお、82-30のディストリビュータは⑦④②①③⑥⑩⑨⑤⑧のピンの順で、上から見るとハートを描くような順番で移動してピンをスポッティングカップにセットする。

AMF 82-70

1960年代に、82-30の次のモデルとして開発され量産され、今も使い続けられているのが82-70というマシンである。おそらく、国内の1980年代以前に作られたAMF採用のセンターでは今もこのマシンを使用していると思われる。
このマシンは、セッティングテーブルの上部にピンを寝かせた状態でストックする供給トレイ(最新のシステムではデュラビンと呼ばれるもの)が存在する。
ディストリビュータは82-30と同様に前後左右に動いて、この供給トレイにピンを配送していく。トレイではピンは寝かせられた状態でストックされ、10本が供給された後もさらにもう1本ずつこのトレイにストックすることができるようだ。

このトレイの真下にあるセッティングテーブルのユニットが空になり、かつトレイに10本が供給されていると、トレイの下部の底が開いてユニット上のスポッティングカップに寝かせた状態でセットされる。
82-30との動作上の大きな違いは、供給トレイを介することでセッティングユニットにはピンをセットする直前にピンのセットが行われることと、ピンが寝かせられた状態でセットされるというところである。ディストリビュータとデュラビン部分は、セッティングユニットと分離されていて、この上部機構は82-30とは異なり上下動をしない。

ピンデッキにピンをセットする時は、この寝かせられた状態のピンを起こしながら、スポッティングカップが掌のように動いてピンを立たせる。
この動作は、レーン側からも見ることができる。ユニットにピンがセットされるのはデッキにセットする直前のタイミングなので、82-30のようにスポッティングカップに待ち状態のピンがあるかどうかはほぼ見えない。ただし、デッキにピンをセットする所作は、前面にカバーが無い分はっきりと見える。セッティングユニットのフレームはシルバーで、そのフレームと共にピンが起こされてセットされる姿は美しいと思う。

ディストリビュータは①③②④⑦⑧⑤⑥⑩⑨の順でセットするようだ。初期の82-70Aというタイプは、⑩③⑥①⑨④②⑤⑦⑧の順。色々見ていると、⑦②④①⑧⑥③⑤⑩⑨の順のタイプもあるようで、これは機器の左右(偶数番号レーン機か奇数番号か)という違いか、同じでもそういう順で供給することもあるのかは確認できていない。

AMF 82-90シリーズ

AMFはその後、1980年代から90年頃にかけて、この82-70を近代化した82-90を開発した。これはコンピュータによる制御を前提とした構造のマシンにしたもので、部品の見直しなどを行っているはずだが、基本的な機構については82-70とほとんど変わらないように見える。多分、レーン側からの見分けは難しいのではないか。

ディストリビュータは①③②④⑦⑧⑤⑥⑩⑨の順で、これは82-70と同じようである。

Brunswick GSシリーズ

一方のBrunswickも、1990年頃から最新のGSシリーズを開発し、2016年時点の最新は2000年頃から導入され始めたGS-Xであるらしい。
これは、それ以前のA-2とは大きく異なり、ターレットが廃止され、AMF 82-70以降のデュラビン供給トレイのシステムになったことである。この供給トレイには、ピンは寝かせられた状態でセットされるが、AMFの82-90デュラビントレイとの違いは、1セット分10本しか蓄積することができない。AMFは1セットを超えて、1カ所に2本目のピンを蓄積することができる。
GS系のマシンのトレイにも、ディストリビュータによりピンが配送されるが、AMFのそれと違い、トレイ上を往復方向に左右で2系統6本のベルトコンベアが走り、その経路上にピンが送られて順に空きトレイに転がり落とされてセットされるようになっている。10本がトレイにセットされた後の11本目以降のピンは、戻り方向へ進むベルトコンベアにより、一旦ピットへ落とされ、ピンエレベータとの経路を循環しながらトレイの空きを待つようになっている。

トレイに寝かされた状態でセットされたピンは、デッキへのセットが必要になった状態でユニット側に落とされて、スポッティングカップの様なパーツで立たせられながらデッキへセットされる。つまり、AMFの82-70以降のシステムに非常によく似た動作をする。
立て方はほぼ同じだと思うのだが、それでも何故か、自分としてはAMFの立て方のほうがどことなく人間味があるような微妙な動きがあって、好みである。GS-Xなどのそれは、直線的な動き、AMFのそれは、やや曲線的な動きとでも違いを説明するべきか。

現在のマシン

こういう動作は、YouTubeではそれぞれのピンセッター名などで検索して見るのも良いが、センター名とか大会名などで検索してそれぞれのマシンの動作を見てみるのも楽しめる。

最新の機種は、さらにコンピュータ制御が働くようになっているなどの進化をしている様子で、また、金属部分はかつては金属色が主流だったのが黒色が主流になっていたり、背面から見るとまるでサーバ機のサーバラックのようにも見えたり、そういう部分は変わってきているのだと思う。

AMFなどでは、ストリングで吊されたピンを使うタイプのピンセッターも販売しているようで、おそらくこっちのほうがコストが安い面などもあり、採用するセンターも出てきているようである。
ピンアクションなどは、さほど変わらないと言われているが、背面でマリオネットのように吊されて動くピンは、自分としてはどうにもピンセッターのロボット動作にも増して気味が悪く、好きにはなれないかも知れない。