823

PILOTの万年筆は色々と所有しているが、気に入って使っているものの一つがカスタム823である。純正のブルーブラックを入れて常用している。
カスタム823は、国産品では他にほとんどないプランジャー式で、インクを本体内に吸入するタイプのものである。ピストンをスクリューで上下させて吸引するタイプとも異なっている。タンク内の気圧をピストン動作で一時的に下げ、その気圧差でインクを一気に吸引する仕組みである。
純正インクは通常の30ml瓶ではなく70ml瓶を使うよう推奨されていて、この瓶にはこの万年筆で吸引するのに都合が良いようにリザーバーの仕組みが付けられている。
当初、そういう特殊な仕様と仕組みなのはどうかと思っていたが、使ってみると重さや太さなどのバランスが良く、743と同じ15号サイズのニブでもあって書きやすい。特にインクを満タンにした時の重さが丁度良い。個体差もあるかもしれないが、自分の使っている細字でもインクフローも良好である。
ただ最近、残りのインクが少なくなると、ペン先部分にインクが溢れてくるという現象が起こってしまう。インク漏れということではないが、もうその一歩手前かというくらいに溢れていてキャップの中にも少しインクがついていたり、そのキャップを取り付けた尻軸、尾栓の側にもインクが着いていたりもする。
ペン先が長年使って開いてしまったとかそういうことはない。まだ数年も経っていないし、そんなに強く筆圧をかけていることはないし、第一普通に使っているくらいでペン先が開いてしまうようなことはあまり考えられない。
おそらく、インクが減ってくるとタンク内に空気が入った状態になるが、それが手の温かみで膨張してインクを押し出すのではないかと想像している。寒い部屋で使うときにそういう状況になりやすいのである。
インクを満タンにしてやると、そういう状況はほとんど生じないので、おそらくそういうことなのではないかと思っている。